障害者手帳を取得するメリットは?デメリットはあるのかも解説

障害者手帳の取得を考えている方のなかには「障害者手帳ってどんなメリットがあるの?」「デメリットはないの?」と気になっている方も多いかもしれません。

そこで本記事では、障害者手帳を取得するメリット・デメリットを解説します。

また、障害者手帳の種類別に受けられるメリットを一覧にまとめていますので、こちらも参考にしてくださいね。

障害者手帳とは

障害者手帳とは、障害や病気により日常生活に課題を抱える方に自治体から交付される手帳です。

障害者手帳を取得すると障害者総合支援法の対象となり、医療費の助成や税額控除、公共機関の割引など、さまざまな福祉サービスが受けられます。

種類

障害者手帳とは、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の総称です。障害の種別や程度によって区分され、指定医の診断書などをもとに交付が決定されます。

それぞれの手帳の対象者や等級・申請方法などは、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

関連記事:障害者手帳とは?等級・対象者から取得のメリットや申請方法を解説

障害者手帳を取得するメリット

障害者手帳を所得すると具体的にどんなメリットが受けられるのでしょうか。ここでは、主なメリットを10個紹介します。

①医療費の助成
②障害者雇用枠での転職・就職
③失業給付期間の延長
④障害者控除(住民税・所得税・相続税)
⑤特別障害者手当
⑥預貯金の非課税対象化
⑦自動車関連の税金の減免
⑧公共機関や携帯電話料金の割引
⑨市営・県営住宅入居の優遇
⑩生活保護の障害者加算

①医療費の助成

障害者手帳の最大のメリットは、医療費の助成が受けられる点です。代表的なものとして「自立支援医療」や「障害者医療費助成制度」があります。

自立支援医療国が実施する医療支援制度で、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の
自己負担額を軽減する公費負担医療制度障害の程度や前年の世帯収入に応じて自己負担額を
軽減する
障害者医療費助成制度都道府県や市町村が実施する医療支援制度で、医療保険の対象となる医療費、薬剤費等を助成自治体によって制度の名称や対象、助成内容が異なる
例)東京都の場合心身障害者医療費助成制度(マル障)

自立支援医療と障害者医療費助成制度は併用できるケースもあるため、お住まいの地域の制度をチェックしてみましょう。

なお、手帳がない場合でも、指定医の診断書を添付して申請できる場合もあります。

②障害者雇用枠での転職・就職

障害者手帳を取得すると「障害者雇用枠」での転職・就職が可能になります。障害者雇用枠とは障害者手帳を持つ人を対象として、一般雇用とは異なる基準を設けた雇用枠です。

設備や休暇制度、業務内容など、必要な配慮が受けられるので、一般雇用に比べて働きやすい環境が整っている点がメリットです。

③雇用保険(失業手当)の受給期間延長

障害者手帳を持っている人は「就職困難者」に分類され、雇用保険(失業手当)の受給期間が延長されます。

年齢被保険者であった期間
1年未満1年以上
40歳以下150日300日
40~65歳360日

参考:よくあるご質問(雇用保険について)|厚生労働省

雇用保険の受給期間が一般の離職者よりも長めに設定され、勤続年数によっての変動もありません。ただし、受給資格を得た時点で、障害者手帳を取得していることが条件になります。失業手当の申請までに、障害者手帳を取得しておきましょう。

④障害者控除(所得税・住民税・相続税)

納税者本人や同一生計配偶者または扶養親族が障害者の場合に、税制面での控除が受けられる制度です。所得から一定額を控除されることで、所得税や住民税、相続税などの税負担が軽減されます。

障害者控除の金額は下記の通りです。

区分所得税控除額住民税控除額相続税控除額
障害者27万円26万円満85歳になるまで1年につき10万円
特別障害者40万円30万円満85歳になるまで1年につき20万円
同居特別障害者(注)75万円56万円

(注)同居特別障害者とは、特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族で、納税者自身、配偶者、その納税者と生計を一にする親族のいずれかとの同居を常況としている人です。
参考:障害者控除|国税庁障害者の税額控除|国税庁障害者に関する税制上の特別措置一覧|内閣府

所得税・住民税の場合は、控除を受ける方が個人事業主の場合は確定申告で、会社員の場合は年末調整の際に申請しましょう。

相続税の場合は、被相続人が亡くなったときの住所地を管轄する税務署に必要書類を提出する必要があります。

⑤特別障害者手当

精神または身体に重度の障害がある方には、月額27,980円の「特別障害者手当」が支給されます。

以下の条件をすべて満たす方が対象です。

  • 精神または身体に著しく重度の障害がある方
  • 日常生活において常時特別の介護を必要とする状態にある方
  • 在宅で、20歳以上の方

参考:特別障害者手当(国制度)|東京都心身障害者福祉センター

なお、特別障害者手当には所得制限があります。受給者本人や同一生計配偶者・扶養義務者の所得が限度額以上であるときは、支給されないので注意しましょう。

所得制限や認定基準の詳細は、お住まいの区市町村の担当窓口にお問い合わせください。

⑥預貯金の非課税対象化

障害者本人が受けられるメリットとして、一定の貯蓄が非課税になる制度があります。

預貯金等の種類非課税貯蓄限度額
障害者等のマル優・預貯金・合同運用信託・特定公募公社債等運用投資信託 
 および一定の有価証券
350万円
(元本の合計額)
障害者等の特別マル優・国債および地方債350万円
(額面の合計額)

参考:障害者等のマル優(非課税貯蓄)|国税庁

通常、利息は課税対象となるため税金が差し引かれた金額しか受け取れません。しかし「障害者等のマル優」「特別マル優」を活用すれば、合計700万円までの利息を非課税で受け取れます。

この制度を利用するには、預け入れをする日までに銀行窓口への書類の提出が必要です。

⑦自動車関連の税金の減免

障害者手帳を持つ方が使用する自動車で一定の要件を満たす場合は、自動車税環境性能割・自動車税種別割が減免になります。

税金の種類概要減免上限額(東京都の場合)
自動車税環境性能割燃費性能に応じて自動車の取得価格に課税される税金課税標準額300万円相当分に税率を乗じて得た額
自動車税種別割自動車の種類や排気量等に応じて毎年支払う税金45,000円

参考:自動車税環境性能割・自動車税種別割の減免制度のご案内|東京都主税局

対象になる自動車は「障害者手帳を取得する本人が所持する自動車」もしくは「仕事や通学のために介護者が利用する自動車」です。

対象となる障害の程度は、障害の区分によって異なります。また減免上限額も地域によって変わるため、詳しくはお住まいの地域の担当窓口にお問い合わせください。

⑧公共機関や携帯電話料金の割引

交通機関の運賃や施設入館料、携帯電話料金などの割引が受けられるのも障害者手帳取得のメリットのひとつです。

【割引が受けられる例】

  • 交通機関(鉄道、バス、タクシーなど)の運賃
  • 動物園や美術館などの施設入館料
  • NHKの受信料
  • 携帯電話の利用料金

例えば、JRでは身体障害者手帳または療育手帳を持つ方に対して、運賃および普通急行料金の5割引を実施しています。またNHKでは一定の要件を満たす障害者・世帯に対して、受信料を半額免除もしくは全額免除しています。

そのほか、携帯電話の大手3社(ドコモ・au・ソフトバンク)も障害者向けに割引プランを用意しているので、ぜひチェックしてみましょう。

⑨市営・県営住宅入居の優遇

障害のある人が公営住宅に申し込んだ場合、優先的に入居できる仕組みがあります。

例えば東京都の場合、以下に該当する障害者は「抽選確率の優遇」が受けられます。(障害の有無に関係なく「収入が少ないこと」「住宅に困っていること」が前提です)

【公営住宅優先入居の対象者の例:東京都の場合】

【甲優遇の資格(優遇倍率 5 倍)】

  • 身体障害者手帳の交付を受けている軽度(5級~)の身体障害者
  • 軽度の知的障害者(愛の手帳の場合は4度)
  • 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている3級の障害者(障害年金等の受給に際し、障害の程度が同程度と判定された方を含む。)

【乙優遇の資格(優遇倍率7倍)】

  • 身体障害手帳の交付を受けている1級~4級の障害者
  • 重度または中度の知的障害者(愛の手帳の場合は総合判定で1度~3度)
  • 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている1級・2級の障害者(障害年金等の受給に際し、障害の程度が同程度と判定された方を含む。)

参考:優遇抽せんとは|東京都住宅政策本部

⑩生活保護の障害者加算

規定の障害がある方が生活保護を受給する場合、年間で最大30万円ほど「障害者加算」を受けられます。一般の方に比べて、通院費や治療費などに生活費がかかることを考慮した支援策です。

加算額は障害の程度や地域によって異なり、都市部になるほど高く設定されています。

1級地2級地3級地
身体障害者障害程度等級表1・2級に該当する者等26,810円24,940円23,060円
身体障害者障害程度等級表3級に該当する者等17,870円16,620円15,380円

参考:【生保基準】最低生活費の算出方法(R4.4 )|厚生労働省

※精神障害者や知的障害者も、障害年金や手当の等級によって加算される場合があります。

対象になったからといって、自動的に加算されるわけではありません。自分で申請をしないと適用されないため、該当する可能性のある方は、お住まいの福祉相談窓口に問い合わせてみましょう。

障害者手帳を取得するデメリットはある?

障害者手帳の取得によって、特段デメリットが生じることはありません。

手帳の存在は自分からオープンにしない限り第三者に知られることはありませんし、もし障害者雇用枠で就職したとしても周りに伝える義務はありません。障害者手帳を持っていても「一般雇用」で働くこともできます。

「やっぱり必要ない」と感じれば返納することもできるため、お守り代わりに持っておいてもよいでしょう。

手帳の取得は強制されるものではないので、「手帳を持つことにどうしても抵抗がある…」という方は、主治医や支援者に相談したり、ご自分のタイミングで心の準備ができてから手続きしてくださいね。

【障害者手帳の種類別】受けられるメリット一覧

身体障害者、精神障害者、療育手帳で受けられるメリットを一覧にまとめましたので、参考にしてください。

◯・・・該当 △・・・一部該当

名称身体障害者手帳精神保健福祉手帳療育手帳
医療障害者医療費の助成(マル障)
※東京都の場合
◯1~3級のみ◯重度のみ
自立支援医療(精神通院)
自立支援医療(更生医療)
自立支援医療(育成医療)
税金所得税・住民税・相続税の控除
自動車関連の税金の減免◯主に1~2級◯重度のみ
手当特別障害者手当△主に1~2級△1級のみ△重度のみ
生活鉄道運賃の割引
NHK受信料の免除
預貯金の非課税対象化
公営住宅入居の優遇
生活保護の障害者加算◯1~3級のみ◯国民年金法1~2級のみ◯国民年金法1~2級のみ

参考:障害者手帳の等級・障害支援区分 障害等級別サービス一覧表|江戸川区
※地域や所得状況によって、対象や内容が変わる場合があります。詳しくはお住まいの福祉担当窓口まで問い合わせてみましょう。

障害者手帳をうまく活用しよう!

障害者手帳を取得すると、医療費の助成を始め就職支援や公共機関の割引など、さまざまな福祉サービスが受けられます。仕事面では、一般雇用枠だけでなく障害者雇用枠にも応募できるようになるため、選択肢の幅が広がります。

障害者手帳を提示するだけで受けられるサービスもあれば、自ら書類を準備して申請しないと適用されないものもあるため、利用できる制度がないかをしっかり確認しましょう。自分らしく生きるためのサポートとして、障害者手帳をうまく活用してくださいね。

障害者手帳の基礎知識や申請方法はこちらの記事で解説しています。

関連記事:障害者手帳とは?等級・対象者から取得のメリットや申請方法を解説

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