精神障害者手帳の等級の審査基準は?等級ごとの違いやメリットも解説

障害者手帳には等級があり、精神障害者手帳の場合は1級から3級に区分されています。手帳の申請を検討されている方のなかには「等級の審査基準は?」「等級によって何か違いはあるの?」と疑問をもつ方も多いかもしれません。

本記事では、精神障害者手帳の等級について下記5点を中心に解説しています。

  • 精神障害者は現状どのくらいいる?
  • 精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)とは
  • 精神障害者保健福祉手帳の等級基準
  • 精神障害者保健福祉手帳の審査はどこで行われる?
  • 精神障害者保健福祉手帳を取得するメリット【等級別】

「自分は何級ぐらいかな?」と気になる方は、ぜひ参考にしてください。

精神障害者は現状どのくらいいる? 

「令和5年版 障害者白書」によると、精神障害者は約614万8千人です。これは千葉県の人口(約622万人)と同じくらいの数で、100人あたりに換算すると100人中4.9人が精神障害者になる計算です。

過去の推移をみてみると平成30年は392万4千人、令和3年には419万3千人と、精神障害者は近年急激に増加していることがわかります。

平成30年(2018年)令和3年(2021年)令和5年(2023年)
約392万4千人約419万3千人約614万8千人※1

※1 総務省「人口推計」2020年10月1日(確定値)を用いて算出

参考:平成30年版 障害者白書令和3年版 障害者白書令和5年版 障害者白書

増加の背景にはさまざまな要因があるとされていますが、高齢者の増加や障害に対する認識の広がり、長引く不況からくる労働環境の悪化や生活不安によるストレスなども原因と考えられています。

身体障害者・知的障害者との比較

「令和5年版障害者白書」のデータでは、身体障害者は約436万人、知的障害者は約109万4千人となっています。100人あたりに換算すると、100人中3.4人が身体障害者、100人中0.9人が知的障害者になる計算です。

障害の種類障害者数
身体障害者約436万人
知的障害者約109万4千人
精神障害者約614万8千人

参考:令和5年版 障害者白書

身体障害者や知的障害者と比較してみると、精神障害者は圧倒的に多いことがわかります。

※ただし、精神障害者は「医療機関を受診した精神疾患の患者数」とされているため、日常生活や社会生活に大きな制限をもたない方も含まれています。

精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)とは

精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)とは「精神障害により長期にわたって日常生活や社会生活に制限のある方」に交付される障害者手帳です。取得することで、障害者総合支援法の対象となり、さまざまな福祉サービスが受けられます。

ここでは、精神障害者保健福祉手帳の基本知識と現状をみていきましょう。

有効期限は2年間

精神障害者保健福祉手帳の有効期限は2年間です。そのため、2年ごとに更新手続きを行い、精神障害の状態について認定を受ける必要があります。

有効期限が切れてしまうと、税金の控除や障害者割引などが受けられなくなるので注意しましょう。

令和3年度の交付数は約126万人

「令和3年度衛生行政報告例の概況」によると、令和3年度末時点の精神障害者保健福祉手帳の交付数は約126万人です。

等級別の内訳は、1級で約13万人、2級が約74万人、3級は約39万人と、交付数がもっとも多いのは2級でした。

等級交付数
1級約13万人
2級約74万人
3級約39万人

参考:令和3年度衛生行政報告例の概況

過去のデータから推移をみてみると、令和元年は約114万人、令和2年は約118万人と増加傾向がみられます。

令和元年(2019年)令和2年(2020年)令和3年(2021年)
交付数約114万人約118万人約126万人

参考:令和3年度衛生行政報告例の概況

精神障害者数の増加に伴い、精神障害者保健福祉手帳の交付数も増えていることがわかりますね。

身体障害者手帳・療育手帳の交付数との比較

「令和3年度福祉行政報告例の概況」によると、身体障害者手帳の交付台帳登載数は約490万人、療育手帳は約120万人です。

手帳の種類障害者数交付数
身体障害者手帳約436万人約490万人
療育手帳約109万4千人約120万人
精神障害者保健福祉手帳約614万8千人約126万人

参考:令和3年度衛生行政報告例の概況令和3年度福祉行政報告例の概況令和5年版 障害者白書

身体障害者手帳や療育手帳と比べると、精神障害者保健福祉手帳は障害者数に対して交付数が少ないといえるでしょう。

精神障害者保健福祉手帳の等級基準

精神障害者保健福祉手帳の等級は1級から3級まであり、精神疾患の状態と能力障害の状態によって総合的に判定されます。

それぞれの等級の判定基準をみていきましょう。

1級

1級は精神障害によって日常生活に著しく制限のある方に適用されます。

日常生活のすべてにおいて常に他人の援助を必要とし、ほとんど寝たきり状態の方が該当します。

精神疾患(機能障害)の状態能力障害(活動制限)の状態
人格の変化や妄想・幻覚、気分障害、精神神経症状、遂行機能障害など高度の症状がある常に他人の支援がなければ、食事や着替え、通院・薬の服薬、家計の管理などが自発的に行えない

参考:精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準について|東京都福祉保健局

2級

2級は精神障害によって日常生活に大きく制限がある方が対象となります。

日常生活のすべてに援助が必要なわけではありませんが、日常にさまざまな制限がかかる状態です。

精神疾患(機能障害)の状態能力障害(活動制限)の状態
人格の変化や妄想・幻覚、気分障害、精神神経症状、遂行機能障害など中等度の症状がある常に他人の支援が必要なわけではないものの食事や着替え、通院・薬の服薬、家計の管理などに助言や援助が必要である

参考:精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準について|東京都福祉保健局

3級

3級は1人でもおおむね日常生活を送れるものの、精神障害によって日常生活や社会生活に支障がある方が対象です。

たとえば、適切な配慮があれば就労が可能な方などが該当します。

精神疾患(機能障害)の状態能力障害(活動制限)の状態
人格の変化や妄想・幻覚、気分障害、精神神経症状、遂行機能障害など軽度の症状がある食事や着替え、通院・薬の服薬、家計の管理などを自発的に行えるが、なお援助を必要とする

参考:精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準について|東京都福祉保健局

精神障害者保健福祉手帳の審査はどこで行われる?

精神障害者保健福祉手帳の審査が行われるのは、各自治体の精神保健福祉センターという専門機関です。申請時の診断書から精神疾患の状態と生活への支障の程度を確認し、等級判定が行われます。

補足:結果に納得できない場合は不服申し立てが可能

等級の判定結果に不服がある場合は、各都道府県知事または指定都市の市長に不服申し立てが行えます。

なお、不服申し立てが可能な期間は、原則として「判定結果を知った日の翌日から起算して3ヶ月以内」です。詳細は判定結果の書類に記載されているのでよく確認しましょう。

精神障害者保健福祉手帳の等級ごとの違い

等級に関係なく全員が受けられる福祉サービスもありますが、制度によっては等級ごとに支援内容が異なることもあります。

たとえば所得税控除の場合、等級に応じて控除額が下記のように変わります。

区分所得税控除額対象
特別障害者40万円精神障害者保健福祉手帳1級
障害者27万円精神障害者保健福祉手帳2級、3級

参考:障害者控除|国税庁

利用したい福祉サービスがあるときは、対象等級や支援内容の違いまで確認しましょう。

精神障害者保健福祉手帳を取得するメリット【等級別】

精神障害者保健福祉手帳を取得すると、以下のような福祉サービスが受けられます。等級別にまとめましたので、参考にしてください。

⚫・・・該当 △・・・一部該当

精神障害者保健福祉手帳
1級2級3級
医療障害者医療費の助成(マル障)
自立支援医療(精神通院)
税金所得税・住民税の控除
自動車関連の税金の減免
手当特別障害者手当
生活鉄道運賃の割引
NHK受信料の免除
預貯金の非課税対象化
公営住宅入居の優遇
生活保護の障害者加算

参考:障害者手帳の等級・障害支援区分 障害等級別サービス一覧表|江戸川区

それぞれ具体的な支援内容については、下記の記事で詳しく解説しています。

関連記事:障害者手帳を取得するメリットは?デメリットはあるのかも解説

精神障害者保健福祉手帳の等級に関するよくある質問

ここでは、精神障害者保健福祉手帳に関して確認しておきたい「よくある質問」をまとめています。

精神障害者保健福祉手帳3級だと手当はいくらもらえる?

3級の方が受けられる福祉サービスには医療費の助成や税金の減免、障害者割引などがありますが、現金による手当の支給はとくに設けられていません。※特別障害者手当は、重度(1級程度)の方が対象です。

ただし、自治体によって独自の手当が用意されている可能性も。お住まいの地域の福祉担当窓口で利用できる制度がないかを確認してみましょう。

また、障害者手帳3級でも判定基準を満たせば、障害年金を受給できる可能性があります。障害者手帳と障害年金は別の制度であるため、別途手続きが必要です。気になる方はお近くの年金事務所、もしくは年金相談センターに問い合わせてみてください。

どの等級でも障害者雇用枠で就職できる?

精神障害者保健福祉手帳を持っている方であれば、等級に関係なく「障害者雇用枠」に応募が可能です。障害者雇用枠では障害を前提としているため、一般雇用に比べて周りからの配慮が得やすく、働きやすい環境が整えられています。

精神障害者保健福祉手帳の等級判定に重要なのは診断書

精神障害者保健福祉手帳の等級は、障害の状態や日常生活への支障の程度に応じて、1級から3級に分類されます。医療費の補助や障害者雇用枠での就労など、等級にかかわらず全員が利用できる福祉サービスもありますが、制度によっては等級で支援内容が異なることもあります。

等級は申請時の診断書を基に審査されるので、困っていることや不便に感じていることはしっかり医師に伝えることが大切です。

障害者手帳の申請方法については下記にて解説しています。「障害者手帳を申請したいけど、何からはじめればよいかわからない」という方はこちらを参考にしてください。

関連記事:障害者手帳の申請方法は?条件・必要なものや費用はかかるのかを解説!

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