療育手帳とは?取得するメリット・デメリットや等級、申請方法を解説

療育手帳とは?

療育手帳とは、一定の知的障害が認められる方に交付される障害者手帳です。申請を検討する方のなかには「どんなメリットがある?」「大人でも取得できるの?」と気になる方も多いでしょう。

そこで本記事では、療育手帳について下記4点を中心に解説しています。

  • 療育手帳とは
  • 療育手帳はどんな人がもらえる?
  • 療育手帳の判定基準と等級
  • 療育手帳を取得するメリット・デメリット

等級ごとに受けられる福祉サービス一覧や障害者手帳の申請方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。

療育手帳とは

療育手帳とは、知的障害により日常生活や社会生活に福祉的配慮を必要とする方に交付される手帳です。取得すると、障害の程度に応じてさまざまな福祉サービスが受けられます。

療育手帳制度は、国のガイドラインに沿って自治体ごとに実施されている制度です。そのため、手帳の名称や等級の区分などの詳細は自治体によって異なります。

たとえば、東京都や神奈川県では「愛の手帳」、青森県や名古屋市では「愛護手帳」と呼ばれています。

療育手帳はどんな人がもらえる?

療育手帳がもらえるのは、18歳の発達期までに知的機能と適応機能に障害があると判定された方です。18歳以上の場合でも、発達期までに障害が生じたと判定されれば、療育手帳の交付対象となります。

療育手帳を申請するためには、18歳未満の場合は児童相談所、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所で障害の判定を受ける必要があります。

補足:発達障害でも交付対象になることがある

ADHDや自閉症スペクトラム障害などの発達障害の方でも、知的障害を伴うと判定された場合は療育手帳の交付対象となります。

発達障害に知的障害が伴う場合は「精神障害者保健福祉手帳」に加え「療育手帳」も申請が可能なため、該当する可能性のある方は手帳の交付について担当医に相談してみましょう。

療育手帳の判定基準と等級

療育手帳の等級は、一般的に重度(A)とそれ以外(B)に区分されます。厚生労働省のガイドラインでは、以下のように判定基準が定められています。

重度(A)の基準

①知能指数がおおむね35以下であって、次のいずれかに該当する者

  • 食事、着脱衣、排便及び洗面等日常生活の介助を必要とする
  • 異食、興奮などの問題行動を有する

②知能指数がおおむね50以下であって、盲、ろうあ、肢体不自由等を有する者

それ以外(B)の基準

重度(A)のもの以外

参考:療育手帳制度の概要|厚生労働省

療育手帳の場合、知能指数(IQ)に加えて、日常生活にどの程度支障があるのかを含めて総合的に判定されます。

上記の基準に準拠して、等級をさらに細かく分けている自治体も多いです。たとえば、東京都や周辺の県では、以下のように等級が区分されています。

東京都1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)
神奈川県A1(最重度)、A2(重度)、B1(中度)、B2(軽度)
埼玉県Ⓐ(最重度)、A(重度)、B(中度)、C(軽度)
千葉県Ⓐ(最重度)、Aの1(重度)、Aの2(重度)、Bの1(中度)、Bの2(軽度)

療育手帳を取得するメリット

療育手帳を取得するとどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、主なメリットとして4つを紹介します。

  • 手当の申請がしやすくなる
  • 税金が減免される
  • 各種割引を利用できる
  • 障害者雇用枠で就労できる

手当の申請がしやすくなる

知的障害者の方が受けられる手当は、療育手帳の等級がひとつの基準になっていることが多いため、手帳を取得することで申請がしやすくなります。

代表的なものとして以下の手当があります。

手当概要
障害児福祉手当精神または身体に重度の障害があり、常時の介護を必要とする20歳未満の方が対象。支給額は月額15,220円
特別児童扶養手当20歳未満の障害児を養育している保護者に支給される支給額は1級で月額53,700円、2級が月額35,760円
心身障害者福祉手当各自治体独自の手当制度名や対象、支給額は自治体によって異なる

参考:障害児福祉手当について|厚生労働省特別児童扶養手当について|厚生労働省東京都重度心身障害者手当|東京都福祉保健局

税金が減免される

療育手帳を取得した本人、もしくは同一生計の配偶者・扶養家族が障害者の場合は「障害者控除」を利用できます。「障害者控除」とは、所得から一定額が控除され住民税や所得税などの負担が軽くなる税制上の制度です。

所得税、住民税それぞれの控除金額は下記の通りです。

区分所得税控除額住民税控除額
障害者27万円26万円
特別障害者40万円30万円
同居特別障害者(注)75万円53万円

(注)同居特別障害者とは、特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族で、納税者自身、配偶者、その納税者と生計を一にする親族のいずれかとの同居を常況としている人です。

参考:障害者控除|国税庁障害者に関する税制上の特別措置一覧|内閣府

各種割引を利用できる

各事業者が独自で実施している「障害者割引」を利用できるのもメリットです。公共交通機関をはじめ、以下のようなさまざまなシーンで割引を受けられます。

  • 鉄道やバス、タクシーなどの運賃
  • 国内航空運賃
  • 美術館や遊園地などの入館料
  • 携帯電話の使用料金
  • NHKの受信料

美術館や遊園地などの場合、同伴者にも割引が適用される場合があるので、ぜひチェックしてみましょう。

障害者雇用枠で就労できる

求人には「一般雇用枠」と「障害者雇用枠」があり、療育手帳を取得すると「障害者雇用枠」での就労も可能になります。障害者雇用枠とは、障害者手帳を持つ方のみを対象とした特別な雇用枠です。

障害があることを理解した上で雇用されるので、障害の特性や体調などへの配慮を受けやすいメリットがあります。

療育手帳を取得するデメリット

療育手帳を取得することに抵抗がある方もいるかもしれませんが、手帳の取得自体に明確なデメリットはありません。

療育手帳を持っているからといって勤務先(就職先)に報告する義務はなく、不要になった際はいつでも返納が可能です。自分からオープンにしない限り、療育手帳を持っていることを周囲に知られることもありません。

手帳の取得は任意なので、ご自身が必要だと感じたタイミングで申請を検討してみてくださいね。

療育手帳の等級ごとに受けられる福祉サービス一覧

ここでは、東京都の例を参考に等級ごとに受けられる主な福祉サービスを一覧にしました。

対象となる要件や支援内容などは地域によって異なる場合があるため、詳細はお住まいの地域の福祉相談窓口で確認しましょう。

⚫・・・該当 △・・・一部該当

療育手帳(愛の手帳)
1度2度3度4度
医療障害者医療費の助成(マル障)
税金所得税・住民税の控除
自動車関連の税金の減免
手当障害児福祉手当
特別児童扶養手当
心身障害者福祉手当
生活鉄道運賃の割引
NHK受信料の免除
預貯金の非課税対象化
公営住宅入居の優遇
生活保護の障害者加算

参考:障害者手帳の等級・障害支援区分 障害等級別サービス一覧表|江戸川区

福祉サービスの支援内容を詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

関連記事:障害者手帳を取得するメリットは?デメリットはあるのかも解説

療育手帳の申請方法

ここでは、療育手帳の申請窓口や必要なもの、申請時の注意点をお伝えします。

申請窓口

療育手帳の申請手続きは、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で行えます。

18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所で障害の判定を受ける必要がありますが、まずは障害福祉担当窓口に行き、どのような流れになるのかを確認しておくとスムーズです。

申請に必要なもの

療育手帳の申請に必要なものは、以下の通りです。

  • 療育手帳交付申請書
  • 顔写真(縦4cm×横3cm)
  • 印鑑
  • マイナンバーカード(もしくは番号通知カード)
  • 本人確認書類(保護者等含む)

障害の判定日には、成育歴や生活状況の聞き取りが行われるため、母子手帳や学校の成績表なども必要です。判定に必要なものは、児童相談所・知的障害者更生相談所に予約を取る際に説明があるので、各自治体の指示に従ってください。

申請するときの注意点

療育手帳が交付されるまでには約1ヶ月かかります。判定の実施状況によっては2ヶ月以上かかる場合もあるので、スケジュールに余裕を持って手続きを進めましょう。

療育手帳の手続きの流れを詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。

関連記事:障害者手帳の申請方法は?条件・必要なものや費用はかかるのかを解説!

療育手帳に関するよくある質問

最後に、療育手帳に関するよくある質問を3つ紹介します。

障害者手帳と療育手帳の違いは何ですか?

療育手帳は、障害者手帳のひとつです。障害者手帳は「療育手帳」のほか「身体障害者手帳」と「精神障害者保健福祉手帳」を含めた3種類の手帳の総称です。

療育手帳は大人(18歳以上)でも取得できますか?

知的障害が18歳の発達期までに生じたものと認定されれば、18歳以上の大人でも療育手帳を取得できます。

ただし、大人になってから事故や病気などで生じた知的障害は、療育手帳の対象にはなりません。18歳以上で高次脳機能障害などにより知的機能が低下した場合は「精神障害者保健福祉手帳」の対象となります。

療育手帳の更新時期はいつですか?

療育手帳は、2~10年ごとに再判定を受ける必要があります。(原則2年ごと)

更新の時期は自治体によって異なりますが、東京都の場合は「3歳・6歳・12歳・18歳に達したとき」と「知的障害の程度に著しい変化の生じたとき」に手続きが必要です。

更新時期は手帳に記載されているため、引き続き手帳が必要な方は期限内に手続きを済ませましょう。自治体によっては更新の通知がくる場合もあります。

療育手帳を取得して福祉サービスを活用しよう

療育手帳は、知的障害によって日常生活に支障が生じており、特別な配慮を必要とする方に交付される手帳です。18歳までの発達期までに生じた知的障害だと判定されれば、大人になってからでも交付対象となります。

療育手帳を取得すると、手当の申請がしやすくなったり、障害者割引を受けられたりとさまざまな福祉サービスが利用できます。また、就職・転職の際には「障害者雇用枠」での働き方を選ぶことも可能です。

療育手帳制度は全国で統一されたものではなく、自治体ごとに詳細が異なります。「どんな福祉サービスが受けられるか気になる」という方は、お住まいの地域の福祉担当窓口に問い合わせてみましょう。

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