「仕事が思うように進まない」と感じたとき、それが病気の影響かもしれないと悩む方もいらっしゃるかもしれません。人によっては、病気や生まれつきの特性が関係している場合もあります。
そこで本記事では、思うように仕事ができないときに考えられる要因について下記3点を中心に解説しています。
- 思うように仕事ができない…病気の可能性がある?
- 思うように仕事ができない要因として考えられる病気や特性
- 思うように仕事ができない! 病気以外に考えられる要因は?
病気や特性が原因で思うように仕事ができないときの対処法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
思うように仕事ができない…病気の可能性がある?
思うように仕事ができないからといって一概に病気とは言えませんが、病気や特性が仕事に影響している可能性はあります。
たとえば、もともと「人の目をみて話せない」「スケジュール管理ができない」などの特性がある場合は、発達障害が影響しているかもしれません。また「急にミスが増えた」「気分の晴れない日が続く」といった場合は、うつ病や適応障害などの精神障害が関係している可能性も考えられるでしょう。
思うように仕事ができない要因として考えられる病気や特性
思うように仕事ができない要因として考えられる病気や特性にはどんなものがあるのでしょうか。それぞれの特徴を詳しく説明します。
I.精神障害
精神障害とは、精神疾患によって判断力や行動のコントロール力の低下などが見られる状態を指します。うつ病やパーソナリティ障害など後天的に発症するものと、発達障害のように先天的なものに分けられます。
ここでは、後天的に発症する主な精神障害を紹介します。
1.うつ病
うつ病は、脳の働きに不調が起こることで生じる気分障害のひとつです。気分の落ち込みや集中力・判断力の低下といった精神症状のほか「眠れない」「食欲がない」などといった身体的症状も現れます。
2週間以上、下記のような症状がみられたらうつ病の可能性があります。
うつ病の主な症状
- 不安感や抑うつな気分が続く
- 眠れない、食欲がない
- いつもはしない簡単なミスが続く
2.適応障害
適応障害とは、環境や変化に適応できず、強いストレスにより心身に不調が現れる状態のこと。うつ病の一歩手前の病態と考えられています。
パワハラや長時間労働などの環境にいて、調子を崩されてしまった方は「適応障害」かもしれません。
症状はうつ病とよく似ていますが、脳の不調によって起こるうつ病とは違い、ストレスの原因を取り除くことで症状が緩和されるのが特徴です。
適応障害の主な症状
- 不安感や抑うつな気分が続く
- 眠れない、食欲がない
- 行動の変化(過度な飲酒や無断欠勤など)
3.パーソナリティ障害
パーソナリティ障害は、ものの捉え方や感情のコントロールなどの機能の偏りにより、本人が苦しんだり周囲が困ったりする場合に診断される精神障害です。
ある日突然発症するのではなく、生まれもった性格と環境によって少しずつ形成されていくものだとされています。
「境界性パーソナリティ障害」や「自己愛性パーソナリティ障害」などさまざまな分類がありますが、共通してみられる症状は以下の通りです。
パーソナリティ障害の主な症状
- ものの捉え方や考え方が偏っている
- 感情のコントロールが難しい
- 安定した人間関係を築くことが難しい
また、パーソナリティ障害のために生きづらさを感じ、うつ病や依存症を伴う方も少なくありません。
4.愛着障害
愛着障害とは、幼少期に養育者との愛着形成がうまくいかず、対人関係などに問題を抱えている状態です。愛着の形成に大切な時期に、安定した愛着が受けられなかった場合、5歳までに発症するとされています。
愛着障害が治療されないまま大人になると、以下のような症状が続くことがあります。
愛着障害の主な症状
- 人との適切な距離感がわからない
- 建設的な話し合いができない
- 自己肯定感が低い
II.発達障害
発達障害とは、脳機能の偏りによって生じる障害です。現在の定義では、発達障害も大枠として精神障害に含まれます。
しかし、うつ病や適応障害など後天的に起こるものとは違い、発達障害は生まれつきの「脳の特性」であり、病気とは異なります。
ここでは、発達障害に代表される「ADHD」と「ASD」について解説します。
1.ADHD(注意欠如・多動症)
ADHDは不注意や多動・衝動性を特徴とする発達障害のひとつです。「落ち着きがない」「待てない」などの特徴が12歳以前から持続的にみられ、生活や仕事に支障をきたしている場合に診断されます。
ADHDの特徴は、成長とともに目立たなくなる場合もありますが、大人になってから診断される人も多くいます。ADHDの主な特徴は、以下の通りです。
ADHDの主な特徴
- ケアレスミスが多い
- いつも探し物をしている
- じっとしていられない
2.ASD(自閉スペクトラム症)
ASDは「人とのコミュニケーションが苦手」「強いこだわりがある」などの特性をもつ発達障害です。
ASDの特性は幼少期からみられ、多くの場合で3歳頃までに診断が可能です。しかし、大人になってから発覚するケースも少なくありません。
ASDの主な特徴は、以下の通りです。
ADHDの主な特徴
- 対人関係を築くことが難しい
- 強いこだわりや限られた興味をもつ
- 感覚が過敏/鈍麻(どんま)である
ASDの方の話し方や振る舞いの特徴は下記にて解説しているので、こちらも参考にしてください。
関連記事:大人のASD(自閉スペクトラム症)の話し方の特徴12選|改善方法も紹介
発達障害は、生まれつきの脳の特性であるため、治療によって治るものではありません。しかし、特性を理解してコントロールすることで、日常や仕事での困りごとを軽減・改善させることが可能です。
思うように仕事ができない! 病気以外に考えられる要因は?
思うように仕事ができないからといって、必ずしも精神障害や発達障害というわけではありません。ここでは、病気や特性以外に考えられる要因を2つ紹介します。
I.単に業務内容に慣れていない
思うように仕事ができない要因として、単に業務内容に慣れていないことがあげられます。
新しい業務や役職についたばかりのときは「思うように仕事ができない」と感じることが多いかもしれません。新しい仕事に慣れるまでには、時間がかかるものです。
業務に慣れていないだけであれば、経験とともに徐々にこなせるようになりますが、もし「何度やっても特定の業務だけ極端にできない」などの場合には、発達障害の可能性も考えられるでしょう。
II.上司のマネジメント力が不足している
仕事がうまく進まない要因として、上司のマネジメント力不足も見逃せません。
「部下への指示が明確でない」「仕事の優先順位が不明瞭」など、上司のマネジメントスキルが不十分な場合、仕事の進行に支障が出ることがあります。
また職場環境があまりにも厳しすぎると、ストレスによって業務効率が低下することもあります。
病気や特性が原因で仕事ができないときの対処法
「思うように仕事ができないのは病気や特性が原因かもしれない」と思ったとき、実際にできる対処法にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、4つの対処法をお伝えします。
- 専門機関に相談する
- 自分の特性を理解する
- 必要な配慮について上司や同僚に共有する
- 自分に合った職種に転職する
I.専門機関に相談する
精神障害や発達障害が疑われる場合、まずは精神科や心療内科への受診を考えてみてください。いきなり病院に行くのに抵抗がある方は、職場のメンタルヘルス部門や人事部に相談してもよいでしょう。
医師やメンタルヘルスの専門家に相談することで、より客観的で具体的な対策が見つかるはずです。まずは専門機関に相談することが、自分の特性を知る第一歩になるでしょう。
II.自分の特性を理解する
得意なことや苦手なこと、何がストレスになりやすいのかを把握することが大切です。
たとえば、集中力が散漫になりやすいという特性を持っている方であれば、仕事を一度にこなすのではなく小さなタスクに分けて取り組むとよいでしょう。
自分の特性を理解することで、具体的な対策を考えやすくなります。
III.必要な配慮について上司や同僚に共有する
自分の特性や状況を理解したうえで、必要な配慮を上司や同僚に伝えることも重要です。具体的にどんなサポートが必要か、何が助けになるかを明確に伝えることで、周りからの理解と協力が得やすくなります。
ただし、自分が言いたくないことについては、必要以上に詳細を伝える必要はありません。
IV.自分に合った職種に転職する
現在の職種が自分の特性と合わない場合は、転職するのもひとつの選択肢です。自分のスキルや経験を活かせる、症状を悪化させない仕事を探すことで、健康と仕事の両立が可能になるでしょう。
転職は大きな決断ですが、自己理解と適切な支援があればきっと新しい道を見つけられるはずです。
思うように仕事ができないのは病気のせい?と感じたら専門機関に相談を
「仕事が思うように進まない」「仕事に対するストレスが増えてきた」と感じたら、それは何らかの病気や特性が影響しているかもしれません。
働くうえで影響を及ぼす可能性のある病気や特性は、自分自身では気づきにくいものです。「思うように仕事ができないのは病気や特性が原因かもしれない」と感じたら、まずは精神科や心療内科への受診をおすすめします。
自分自身の特性を理解し、適切な支援を受けることで、仕事上の問題も解決しやすくなるでしょう。
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