精神障害者手帳はどんな人がもらえる?取得するメリット・デメリットや等級を解説

精神障碍者手帳はどんな人がもらえる?

精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)は、発達障害を含む一定の精神障害が認められる方に交付される障害者手帳です。申請を検討する方のなかには「どんな人がもらえる?」「デメリットはないの?」と気になる方も多いでしょう。

そこで本記事では、障害者手帳の等級について下記4点を中心に解説しています。

  • 精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)とは
  • 精神障害者保健福祉手帳はどんな人がもらえる?
  • 精神障害者保健福祉手帳の等級とは?
  • 精神障害者保健福祉手帳を取得するメリット・デメリット

等級ごとに受けられる福祉サービスの一覧も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)とは

精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)とは、何らかの精神疾患により長期にわたって日常生活や社会生活に制約のある方に交付される手帳です。

取得することで障害者総合支援法の対象となり、さまざまな福祉サービスや税制等の優遇措置が受けられます。
精神障害者保健福祉手帳の有効期限は2年間で、継続が必要な場合は更新手続きをしなければなりません。

精神障害者保健福祉手帳はどんな人がもらえる?

精神障害者保健福祉手帳の対象疾患は、以下の通りです。

  • 統合失調症
  • うつ病、そううつ病などの気分障害
  • てんかん
  • 薬物依存症
  • 高次脳機能障害
  • 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害など)
  • そのほかの精神疾患(ストレス関連障害など)

参考:障害者手帳・障害年金|こころの情報サイト

上記の疾患に関する精神障害が一定以上認められ、かつ対象疾患による初診日から6ヶ月以上経過している方が交付対象になります。

精神障害者保健福祉手帳の等級とは?

精神障害者保健福祉手帳の等級は、障害の程度と日常生活への影響に応じて、1~3級に区分されています。

1級精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの

引用:障害者手帳・障害年金|こころの情報サイト

それぞれの定義について詳しくみていきましょう。

1級

1級で定義されている「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」とは、人から援助を受けなければ日常生活を送れない状態を意味します。

具体的には、以下のようなケースが当てはまります。

  • 食事の準備、身辺の清潔保持(洗面・入浴)、金銭管理などに援助が必要である
  • 自発性が著しく乏しく引きこもりがちで、些細な出来事が病状に影響する
  • 入院の場合は常に援助が必要である
  • 在宅の場合は通院に付き添いが必要である

参考:精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について|厚生労働省

2級

2級は、日常生活に支障をきたすものの必ずしも常にサポートを受ける必要はない状態を指します。
たとえば、以下のような状態が当てはまります。

  • 食事の準備、身辺の清潔保持(洗面・入浴)、金銭管理などに助言や援助を必要とする
  • 引きこもりは顕著ではないものの、自発的な行動に困難がある
  • 通院など習慣化された外出はできるが、それ以外の場所には付き添いが必要である

参考:精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について|厚生労働省

3級

3級は、家事や身だしなみなどの日常生活はおおむね1人でできるものの、なお援助を必要とする状態です。
具体的には、以下のようなケースが当てはまります。

  • 食事の準備、身辺の清潔保持(洗面・入浴)、金銭管理などはおおむね1人でこなせる
  • 対人交流があり引きこもりがちでもないが、協調的な対人関係づくりはなお援助が必要である
  • 普通のストレスでは症状の再燃や悪化が起きにくい

参考:精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について|厚生労働省

精神障害者保健福祉手帳を取得するメリット

精神障害者保健福祉手帳を取得するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?

主なメリットとして下記3点を解説します。

  • 医療費の自己負担分が軽減される
  • 税金の減免や障害者割引を利用できる
  • 障害者雇用枠での就職・転職が可能になる

医療費の自己負担分が軽減される

精神障害者保健福祉手帳を取得すると、障害者自立支援医療(精神通院医療)制度に申請しやすくなるメリットがあります。

障害者自立支援医療制度とは、精神疾患によって継続的な通院が必要となる方に対する公費負担医療制度です。適用されると、医療費の負担が1割に軽減されます。

手帳がなくても申請は可能ですが、手帳があると診断書の提出が省略できるため申請がスムーズに進みます。

税金の減免や障害者割引を利用できる

納税者本人や同一生計配偶者または扶養親族が精神障害者保健福祉手帳を持っている場合、「障害者控除」を受けられます。所得から一定額が控除されることで、所得税や住民税の減免が受けられる制度です。

そのほか、携帯電話の利用料金や遊園地の入館料など、事業者が独自に行っている「障害者割引」を利用できるのも大きなメリットです。

電車やバスなど交通機関の場合、障害者割引の対象に精神障害者が含まれていないことが多いです。しかし、都営交通の精神障害者都営交通乗車証や東急バスの運賃割引など、精神障害者を対象とした割引を実施しているところもあるので、よく使う路線をチェックしてみてくださいね。

障害者雇用枠での就職・転職が可能になる

精神障害者保健福祉手帳を取得すると、一般雇用だけでなく「障害者雇用枠」での就職・転職も可能になります。障害者雇用枠とは、障害者手帳を持つ人のみを対象とした特別な雇用枠です。民間企業では、一定数以上の従業員がいる場合、障害者の割合を法定雇用率(2.3%)以上にすることが義務付けられています。

参考:障害者雇用のルール|厚生労働省

障害者の雇用を前提としているため、周囲からの理解や配慮が得られやすく、働きやすい環境が整っている点がメリットです。

精神障害者保健福祉手帳を取得するデメリット

手帳の交付までに時間がかかる、2年ごとに更新が必要など手間はあるものの、精神障害者保健福祉手帳の取得により不利益が生じることはないでしょう。

手帳を持つことに抵抗がある方もいるかもしれませんが、周りに告知する義務はないため、日常生活を送る際に周囲に知られることはありません。また精神障害者保健福祉手帳の場合、表紙に「障害者手帳」とのみ記入され、障害の種別がわからないような配慮もされています。

手帳の取得はあくまでも任意です。不要だと感じたらいつでも返納できるので、とりあえず手元においておくだけでもよいでしょう。

精神障害者保健福祉手帳の等級ごとに受けられる福祉サービス一覧

精神障害者保健福祉手帳の取得によって受けられる主な福祉サービスを一覧にしました。

⚫・・・該当 △・・・一部該当

精神障害者保健福祉手帳
1級2級3級
医療障害者医療費の助成(マル障)
自立支援医療(精神通院)
税金所得税・住民税の控除
自動車関連の税金の減免
手当特別障害者手当
生活鉄道運賃の割引
NHK受信料の免除
預貯金の非課税対象化
公営住宅入居の優遇
生活保護の障害者加算

参考:障害者手帳の等級・障害支援区分 障害等級別サービス一覧表|江戸川区

地域によって詳細が異なるので、詳しくはお住まいの地域の福祉相談窓口で確認しましょう。
またそれぞれの福祉サービスの詳細はこちらの記事で詳しく紹介しているので、参考にしてください。

関連記事:障害者手帳を取得するメリットは?デメリットはあるのかも解説

精神障害者保健福祉手帳の申請方法

ここでは、精神障害者保健福祉手帳の申請に必要なものや窓口、申請するときの注意点をお伝えします。

申請に必要なもの

精神障害者保健福祉手帳の申請に必要なものは、以下の通りです。

  • 障害者手帳申請書
  • 診断書(3ヶ月以内に作成されたもの)
  • 本人の写真(縦4cm×横3cm、脱帽・上半身、1年以内に撮影したもの)
  • 宛名を書いた郵便はがき(交付予定日の通知を希望する方のみ)
  • マイナンバーカード(もしくは番号通知カード)
  • 本人確認書類(パスポートや免許証など)

参考:精神障害者保健福祉手帳|東京都福祉保健局

すでに精神障害によって障害年金もしくは特別障害給付金を受給している場合は、年金証書などのコピーがあれば診断書は不要です。

申請窓口

精神障害者保健福祉手帳の申請は、各自治体の障害福祉窓口で行えます。

障害福祉窓口は、市役所や区役所、保健所、保健センターなどに設置されているので、お住まいの自治体に確認してみましょう。

申請するときの注意点

精神障害者保健福祉手帳は「対象となる精神疾患の初診日から6ヶ月以上経過していること」が交付の条件になります。申請に必要な診断書は、初診日から6ヶ月以上経ってからしか作成できないため、注意しましょう。

また自治体によって異なるものの、申請から交付までには2ヶ月ほど時間がかかります。医療機関への確認が必要なケースでは、2ヶ月半以上かかることも珍しくありません。いつまでに手帳が必要なのかを確認のうえ、スケジュールに余裕をもって申請しましょう。

精神障害者保健福祉手帳の申請方法や手続きの流れなど、詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

関連記事:障害者手帳の申請方法は?条件・必要なものや費用はかかるのかを解説!

精神障害者保健福祉手帳に関するよくある質問

ここでは、精神障害者保健福祉手帳に関するよくある質問を2点紹介します。

精神障害者保健福祉手帳3級は取得しても意味がない?

3級は精神障害者保健福祉手帳のなかで一番低い等級ですが、取得に意味がないわけではありません。

等級が上がるほど福祉サービスは手厚くなるものの、税金の減免や障害者割引、障害者雇用枠での就労など、等級に関係なく利用できる制度も数多くあります。また、精神障害者保健福祉手帳3級を取得していると、公営住宅入居の優遇措置を受けられます。

「障害による経済的・身体的負担を少しでも減らしたい」という方は、ぜひ手帳の取得を検討してみてください。

精神障害者保健福祉手帳2級の手当はいくら?

精神障害者保健福祉手帳2級の方が、申請できる手当に「障害年金」があります。

手帳と障害年金はまったく別の制度のため、手帳で2級と認定されたからといって障害年金も2級になるとは限りません。また、手帳とは別に手続きが必要になるので注意してください。

障害者年金で1級・2級に認定された場合、以下の金額が受け取れます。

【障害基礎年金の年金額(令和5年4月分から)】

障害等級67歳以下の方68歳以上の方
1級993,750円 + 子の加算額※990,750円 + 子の加算額※
2級795,000円 + 子の加算額※792,600円 + 子の加算額※

※子の加算額 2人まで1人につき 228,700円、3人目以降は1人につき 76,200円(生計を維持されている子がいるときに加算されます)

参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構

子どものいない67歳以下の方で障害等級が2級の場合、1ヶ月あたりの金額に直すと約66,000円です。
なお厚生年金保険の加入中に初診日がある方は、障害基礎年金に加えて「障害厚生年金」が上乗せされます。(障害厚生年金は、加入期間や納めていた保険料によって金額が変わります。)

精神障害者保健福祉手帳にはさまざまなメリットがある

精神障害者保健福祉手帳とは、精神疾患や発達障害などにより日常生活に制約のある方に交付される手帳です。

取得することで、障害者自立支援医療への申請がしやすくなったり、税金が減免されたりとさまざまなメリットがあります。経済的な支援だけでなく、仕事面では「障害者雇用枠」での働き方も選択できますよ。

受けられる福祉サービスは自治体によっても異なるため、まずはお住まいの地域の福祉担当窓口で情報収集をしてみてくださいね。

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