障害者雇用という言葉を聞いたことがあっても「そもそもどんな制度?」「障害者雇用で働くメリットは?」と疑問に思う方も多いでしょう。
本記事では、障害者雇用の制度について下記4点を中心に解説しています。
- 障害者雇用の制度概要
- 障害者雇用の対象者と条件は?
- 障害者雇用と一般雇用との違い
- 障害者雇用で働くメリット・デメリット
障害者雇用で働くための支援制度・相談先も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
障害者雇用の制度概要
障害者雇用に関する制度は「障害者の雇用の促進等に関する法律」(通称:障害者雇用促進法)で定められています。
まずは、障害者雇用促進法の概要やおさえておきたい制度、2023年度以降の変更点をみていきましょう。
障害者雇用促進法とは
障害者雇用促進法は、障害者の雇用の安定を目的として定められた法律です。
障害の有無にかかわらず、それぞれの特性に応じて自立できる共生社会の実現を目指すもので、主に下記の3つの要素から構成されています。
骨子 | 概要 |
---|---|
職業リハビリテーションの推進 | 仕事を通じて自己実現や経済的自立の機会を作り出していく取り組みの推進(障害者・事業主に対する指導や助言等) |
障害者に対する差別の禁止 | 障害者に対する差別の禁止および合理的配慮の提供義務等 |
雇用義務等に基づく雇用の促進 | 法定雇用率の達成義務等 |
障害者雇用率制度(法定雇用率)とは
障害者雇用促進法でおさえておきたいのは、43条第1項で定められている「障害者雇用率制度」です。
障害者雇用率制度では、従業員を一定数以上雇用している事業主に対して障害者を一定割合以上雇用することが義務づけられています。
「法定雇用率」は、企業や団体の種類に応じて下記の数値がそれぞれ設定されています。
法定雇用率 | |
---|---|
民間企業 | 2.3% |
特殊法人 | 2.6% |
国、地方公共団体 | 2.6% |
都道府県等の教育委員会 | 2.5% |
民間企業の法定雇用率は2.3%です(2023年6月時点)。民間企業では従業員を43.5人以上雇用している場合は、障害者を1人以上雇用しなければなりません。
なお、法定雇用率を満たさなかった企業にはペナルティがあり、不足する労働者に応じて1人あたり月額50,000円の「障害者雇用納付金」を納付する必要があります。
2023年度以降の障害者雇用促進法の変更点
障害者雇用促進法は、時代の変化に即してたびたび改正が行われています。2023年度以降の主な変更点として下記の2つをおさえておきましょう。
- 法定雇用率の引き上げ
- 短時間労働者の算定方法の変更
それぞれを簡単に説明します。
法定雇用率の引き上げ
法定雇用率は、2024年度から2026年度にかけて段階的に引き上げられることが決定しています。
2023年(令和5年) | 2024年4月(令和6年) | 2026年7月(令和8年) | |
---|---|---|---|
民間企業の法定雇用率 | 2.3% | 2.5% | 2.7% |
対象事業主の範囲 | 43.5人以上 | 40.0人以上 | 37.5人以上 |
参考:令和5年度からの障害者雇用率の設定等について|厚生労働省
法定雇用率は原則5年ごとに見直しが行われており、これまでも段階的に引き上げられてきました。今後も障害者の方が活躍できる場は増えていくことが予想されます。
短時間労働者の算定方法の変更
2024年4月以降は、短時間労働者の算定方法も一部変更になります。
これまで短時間労働とみなされる労働時間の要件は週20~30時間未満でしたが、2024年4月以降は週10~20時間未満の場合も算定対象に加わります。
変更点 | 変更内容 |
---|---|
一部の週所定労働時間20時間未満の方の雇用率への算定 | 2024年(令和6年)4月~労働時間が週10~20時間未満の精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者は0.5カウントとして算定 |
参考:障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について|厚生労働省
障害者雇用の対象者と条件は?
障害者雇用促進法で雇用義務の対象になるのは、原則として障害者手帳を取得している方です。詳しくは下記の表を参考にしてください。
障害の種別 | 雇用義務の対象 |
---|---|
身体障害者 | 身体障害者手帳を持つ人 |
精神障害者 ※発達障害を含む | 精神障害者保健福祉手帳を持つ人かつ、病状が安定し就労が可能な状態の人 |
知的障害者 | 療育手帳を持つ人または、知的障害の判定機関による判定書を持つ人 |
精神障害者の場合は「病状が安定し就労が可能であること」も条件になります。
障害者雇用と一般雇用との違い
障害者雇用と一般雇用では、働き方にどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、障害者雇用と一般雇用の違いを簡単に解説します。
障害者雇用の場合
障害者雇用とは、障害者手帳を持つ方のみを対象とした特別な雇用枠です。
企業側は障害者を雇用することを前提として採用するため、周りからの配慮が得られやすく、障害者の方にとって働きやすい環境が整っているなどの特徴があります。
障害者手帳の取得者は、障害者雇用枠にしか応募できないわけではありません。希望に応じて一般雇用への応募も可能です。
一般雇用の場合
一般雇用とは、障害の有無にかかわらず、企業の提示する応募条件を満たす方であれば誰でも応募できる雇用枠です。
求人数が多い分選択肢は多いものの、障害に対して必要な配慮が得られないことも少なくありません。
障害者雇用と一般雇用の違いや正社員になる方法については、下記にて詳しく解説しているのでこちらも参考にしてください。
関連記事:障害者雇用で正社員は難しい?一般雇用との違いや正社員になる方法も解説
障害者雇用で働くメリット・デメリット
障害者雇用と一般雇用の違いを簡単に理解したところで、続いては障害者雇用で働くメリット・デメリットをおさえておきましょう。
メリット
障害者雇用で働くメリットは下記の2点です。
- 障害に対する配慮を得られやすい
- 一般雇用よりも就職しやすい
障害者雇用枠で働く一番のメリットは、障害に対して必要な配慮を得られやすい点です。
企業によってどこまで対応しているかは異なるものの、たとえば、筆談や手話によるコミュニケーションや業務量の調整、車椅子用のスロープの設置など、障害の特性に応じた配慮が受けやすくなります。
また、障害者の方にとって一般雇用に比べると就職しやすい点もメリットです。法定雇用率により従業員数が多いほど採用枠も増えるため、就職先として人気の高い大手企業は一般雇用枠よりも受かりやすい傾向にあります。
デメリット
一方で下記のようなデメリットもあります。
- 求人数が一般雇用ほど多くない
- 一般雇用に比べて平均月収が低い
障害者雇用枠の求人数は一般雇用ほど多くはありません。そのため、職種や仕事内容が限られる傾向にあります。
また、一般雇用に比べると平均月収が低いこともデメリットです。平均月収が低い原因は非正規雇用や短時間労働者の割合が多いことのほか、スキルアップがしにくい仕事が比較的多く、昇給につながりにくいといった要因も考えられます。
障害者雇用で働くための支援制度・相談先
「障害者雇用に興味はあるけど何からはじめればよいかわからない」という方もいるでしょう。
ここでは、障害者雇用で働くための支援制度や相談先を5つ紹介します。
- ハローワーク
- 就労移行支援
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
- 障害者専門の就職・転職エージェント
ハローワーク
ハローワークには、障害者向けに専門相談窓口が用意されています。障害者雇用枠の求人情報の提供だけでなく、就職活動の進め方の相談やキャリアコンサルティングなど、障害について専門的な知識をもった相談員がサポートしてくれます。
障害者手帳を取得していない方でも「長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な方」に該当していれば、利用が可能です。
就労移行支援
就労移行支援とは、就労に向けたトレーニングを行う通所型の福祉支援サービスです。働くために必要なマナーやスキルの習得ができるほか、職場見学やキャリアプランの相談なども可能です。
ハローワークと違って直接求人を紹介してくれるわけではありませんが、自分の特性に合った職場を見つけるサポートをしてくれますよ。
就労移行支援は、障害者手帳を取得していない方でも、医師の診断書などがあれば利用可能です。お住まいの市町村の障害福祉課に相談すれば、通える範囲にある事業所を教えてもらえるので足を運んでみましょう。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、障害者と事業主の双方をサポートする支援機関です。
障害者に対して、専門的な職業リハビリテーションを提供しています。職業リハビリテーションとは「仕事を通じて自己実現や経済的自立の機会を作り出していく取り組み」のことを指し、主に職業相談や職業評価、職業準備支援、リワーク(復職復帰支援)などを行っています。
職業カウンセラーやジョブコーチなど専門的な知識をもったスタッフがいるため「より専門的なアドバイスがもらいたい」という方におすすめです。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、就業面と生活面の一体的な相談・支援を行う機関です。求人情報の提供や職業訓練など実際の支援を行う機関ではなく、相談や助言、ハローワークや就労移行支援など関係機関へのあっせんがメインとなります。
「就労のために利用できる福祉サービスを知りたい」「自分に必要な支援機関を紹介してほしい」という方は、まず利用してみましょう。
障害者専門の就職・転職エージェント
行政機関の支援サービスと並行して、障害者専門の就職・転職エージェントを活用するのもおすすめです。
障害者に特化した就職・転職エージェントなら、キャリア相談や求人のマッチングはもちろん、スキルアップセミナーや履歴書・面談対策など、きめ細かくサポートしてくれます。
障害者専門の就職・転職エージェントの選び方や活用ポイントについては、下記の記事で詳しく解説しているのでこちらも参考にしてください。
関連記事:【障害者雇用】転職エージェントの選び方や活用ポイントを紹介
障害者雇用制度を活用するには障害者手帳が必須
企業や自治体などは障害者雇用促進法によって、一定割合以上の障害者を雇用することや、障害がある方への差別の禁止などが義務づけられています。
障害者雇用促進法で雇用義務の対象になるのは、原則として障害者手帳を取得している方に限られます。障害者雇用制度を活用して「障害者雇用枠」で就職するためには、障害者手帳が必要であることをおさえておきましょう。
障害者手帳を取得すると、障害者雇用枠での就労ができる以外にも、医療費の補助や税金の減免などさまざまな経済的支援が受けられます。これを機に障害者手帳の取得を検討してみてはいかがでしょうか。
下記の記事では障害者手帳のメリット・デメリットや申請方法を紹介しています。障害者手帳についてもう少し詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
関連記事:障害者手帳とは?等級・対象者から取得のメリットや申請方法を解説
なお、ハローワークや就労移行支援などの福祉支援サービスは、障害者手帳を取得していなくても利用可能です。「自分にはどんな支援が必要なのかわからない」という方は、情報収集からはじめるのもよいでしょう。
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