ASD(自閉スペクトラム症)とは、脳機能の偏りによって生じる発達障害の一種です。見た目だけではわからない障害ですが、ASDの特性が話し方や振る舞いに現れることもあります。
そこで本記事では、ASDに見られる話し方の特徴について下記3点を中心に解説しています。
- ASD(自閉スペクトラム症)とは
- 大人のASDに見られる話し方の特徴12選
- 話し方の改善方法
「ASDの話し方に特徴はあるの?」「話し方でわかってしまうことはある?」と気になっている方は、ぜひ参考にしてください。
ASD(自閉スペクトラム症)とは
ASD(自閉スペクトラム症)とは、先天的な脳機能の偏りによって生じる発達障害のひとつです。主な特性として以下の3つがあげられます。
- 対人関係を築くことが苦手
- 強いこだわりや限られた興味をもつ
- 感覚の過敏/鈍麻(どんま)
これまでは「広汎性発達障害」や「自閉症」「アスペルガー症候群」などさまざまな呼び方がありましたが、2013年にアメリカ精神医学会の診断基準が改定されたことから、現在ではASD(自閉スペクトラム症)としてまとめて表現されるようになりました。
大人のASDに見られる話し方の特徴12選
ここでは、大人のASDに見られる話し方の特徴を12個紹介します。
- 表情や抑揚の変化が乏しい
- あいまいな質問に答えるのが苦手
- 相手に合わせた話し方が難しい
- 自分の気持ちや考えを言葉にするのが難しい
- 思ったことをそのまま言葉にしやすい
- 空気を読んだ発言が難しい
- 話すタイミングがわからない
- 細かいことにこだわり結論にたどり着かない
- 難しい言葉を使いやすい
- 言葉の通りに受け取りやすい
- 視線が合わない
- 話し始めるのが遅い
ASDによる特性の出方は人によってさまざまです。紹介する特徴に当てはまる人もいればそうでない人もいるため、あくまでも目安として参考にしてください。
1.表情や抑揚の変化が乏しい
コミュニケーションの特性上、ASDの方は、表情の変化が乏しく一本調子な話し方になりがちです。抑揚がなく、アナウンサーがニュースを読むように淡々と話す方もいます。
表情を作ることが苦手なため、自分では明るく元気に話しているつもりでも、それがうまく伝わらず相手を不快にさせる原因になることもあります。
2.あいまいな質問に答えるのが苦手
ASDの方は、あいまいな表現を理解するのが苦手です。そのため、「最近どう?」「今どういう気持ち?」など大雑把な質問をされると、なんと答えればよいかわからず、返答につまってしまうことも少なくありません。
また「ちょっと少なめに」「適当にやっておいて」など、基準が人によって違う指示に対しては、「ちょっとってどのくらい?」「適当って?」と戸惑ってしまうことも多いです。
3.相手に合わせた話し方が難しい
相手に合わせた話し方が難しいことも、ASDに見られる特徴のひとつです。
たとえば、上司に対して友達と接するように話したり、親しい間柄なのに敬語で話し続けたりなど、関係性に合わない振る舞いをすることがあります。
4.自分の気持ちや考えを言葉にするのが難しい
ASDの方のなかには、特定の刺激を過剰に受け取ってしまう「感覚過敏」の特性が強い方もいれば、刺激に対しての反応が弱い「感覚鈍麻」の特性をもつ方もいます。
感覚鈍麻の特性が強い方は「自分の感情がよくわからない」「思っていることを言葉にしてうまく伝えられない」という問題を抱えている方も少なくありません。
5.思ったことをそのまま言葉にしやすい
ASDの方は、相手の気持ちを汲み取ることが苦手です。
相手の気持ちを考えないままに、言いたいことや思ったことをストレートに口にするため、悪気はなくても失言になってしまうこともあります。
6.空気を読んだ発言が難しい
ASDの特性上、空気を読めない発言をしてしまうこともあります。
他人の行動の意味を考えたり、予測したりすることが苦手なため、その場の雰囲気から自分が何を言うべきかを察することが難しいのです。
7.話すタイミングがわからない
ASDの方は、非言語コミュニケーションが苦手です。動きや表情から相手の感情を読み取ることが難しいため、話すタイミングをつかめないことも多々あります。
たとえば、集中して仕事をしている同僚に突然ミーティングを持ちかけてみたり、帰る支度をしている上司に仕事の質問をしたりなど、自分の都合やタイミングで行動してしまいがちです。
8.細かいことにこだわり結論にたどり着かない
細部にこだわるため全体の要約がうまくできず、話し始めると結論になかなかたどり着かないことも多いです。
またどこまで話せば相手に伝わるかがわからないため、必要以上に細かく話してしまうことも簡潔に話せない原因になっています。
9.難しい言葉を使いやすい
普段の会話では使わない難しい単語や言い回しを使いやすい点も、ASDに見られる話し方の特徴のひとつです。
人とのコミュニケーションが苦手なASDの方にとっては、書き言葉と話し言葉の区別が難しく、本やネットに書かれた言葉をそのまま使う傾向にあります。
10.言葉の通りに受け取りやすい
言葉を文字通りの情報として受け取りやすいのも、ASDの方の特徴です。
そのため、社交辞令や冗談が通じなかったり、皮肉を言われたのに褒められたと思ったり、相手の意図とは違う解釈をしてしまうことがあります。
11.視線が合わない
他人と目を合わせることが苦手というASDの方は多いです。不安やストレスを感じる、目を合わせることに意味を感じないなどの理由から、会話中も無意識に目を反らしてしまう傾向にあります。
12.話し始めるのが遅い
ASDの方は、複数のことを並行して考えることが苦手です。そのため、たとえば何か別の作業をしているときに人から話かけられると返答に詰まってしまうことがあります。
また、会話のなかで情報量が多すぎると思考が追いつかないことも。ひとつずつ考えて処理する時間が必要なため、話し始めるまでに時間がかかってしまうのです。
【大人のASD】話し方の改善方法
ASDは生まれつきの脳機能の偏りによる障害ですが、話し方や振る舞いなどは、自己理解と会話のトレーニングによって克服できる場合もあります。
ここでは、話し方の改善方法について4つのポイントをお伝えします。
- 思ったことをすぐに口に出さない
- 相手の話を聞き気持ちを汲み取る
- 相手の目を見てあいづちを打つ
- 親しい人からアドバイスをもらう
思ったことをすぐに口に出さない
よかれと思って言ったのになぜか相手が怒ってしまったという経験がある方もいるかもしれません。たとえ真実であったとしても、状況によっては口に出すことで相手を不快にさせてしまうこともあります。
発言する前にいったん間をおいて「それを伝えたら相手はどう感じるか」「別の言い方はできないだろうか」と考える癖をつけましょう。「うーん」「そうなんですね」とあいづちを使って時間を稼ぐのも有効です。
相手の話を聞き気持ちを汲み取る
一方的に話し続けるなど、自分中心のコミュニケーションでは人間関係はうまくいきません。まずは相手の話をしっかり聞き、気持ちを理解する姿勢が大切です。
普段から相手の話が聞けるようになると「相手はどうしてほしいのか」「なんと言ってほしいのか」と、気持ちも汲み取りやすくなります。なかなか会話で実践するのが難しい場合は、メールから初めてみるのもよいでしょう。
相手の目を見てあいづちを打つ
相手が話しているときは、目線を合わせ適度にあいづちを打ちましょう。話をしっかり聞いているとアピールすることで、スムーズなコミュニケーションにつながります。
どうしても直接目を合わせられない場合は、目と目の間を見る、ときどき鼻や頬に目線を移すなども有効です。あいさつや短時間の会話から目を合わせる時間を延ばして、徐々に慣れていきましょう。
あいづちを打つ際は「そうなんですね」「そういうこともありますよね」など、肯定や共感を示す言葉を使うのもポイントです。
親しい人からアドバイスをもらう
ASDの方は自分を客観視するのが苦手な傾向にあります。そのため、信頼できる友人から「周囲にどんな印象を与えているのか」「トラブルの原因が自分のどこにあるのか」など、率直にアドバイスをもらうのもひとつの方法です。
もし周りに気軽に相談できる人がいない場合は、発達障害のカウンセラーなど専門家に頼ってみるのもよいでしょう。
大人のASDかな?と思ったら専門機関に相談を
今回紹介した特徴に多く当てはまるからといって、必ずしもASDであるとは限りません。
ASDの診断ができるのは専門の医師だけです。もし何かしらの生きづらさを感じている場合は、発達障害者支援センターで相談をする、発達障害専門の病院を受診するなどして、専門機関による治療やサポートを受けることをおすすめします。
ASDを含む発達障害と診断された方は、精神障害者保健福祉手帳もしくは療育手帳の交付対象になる可能性があります。障害者手帳を取得すれば、国や自治体からさまざまな支援が受けられるので、ぜひ申請を検討してみましょう。
「障害者手帳を取得するとどんなメリットがあるの?」と気になる方は、こちらの記事も参考にしてくださいね。
関連記事:障害者手帳とは?等級・対象者から取得のメリットや申請方法を解説
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