「特例子会社」と聞いたことはあっても、どんな会社なのかよく理解していない方も多いのではないでしょうか。特例子会社とは、障害者の雇用促進・安定を図るために設立された会社のことを指します。
本記事では、特例子会社について下記4点を中心に解説しています。
- 特例子会社とは?認定要件や雇用条件
- 特例子会社で働くメリット・デメリット
- 特例子会社と一般企業の障害者雇用枠との違い
- 特例子会社での就労に向いている人
特例子会社で働いている方の実例や、求人の探し方も紹介していますので、ぜひ参考にしてくださいね。
特例子会社とは?
特例子会社とは、障害のある方の雇用促進・安定を目的に設立された会社のことを指します。一般企業と比べて、障害者のための設備や制度、スタッフなど職場環境が整っているため、障害の種別や程度に関係なく、働きやすい特徴があります。
また、特例子会社を持つ親会社は、関係する子会社も含めて、企業グループとして障害者雇用率を算定することが可能です。
認定要件
特例子会社に認定されるには、以下の要件を満たす必要があります。
【親会社の要件】
- 親会社が子会社の意思決定機関を支配していること
【子会社の要件】
- 親会社との人的関係が緊密であること
- 雇用される障害者が5人以上で、全従業員に占める割合が20%以上であること。また雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が30%以上であること
- 障害者のために施設を改善したり、専任の指導員を配置したりなど障害者の雇用管理を適正に行うに足りる能力を有していること
- その他、障害者の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められること
わかりやすくいえば「親会社が適切に管理していること」「障害の種別に関係なく、一定の割合で障害者を雇用すること」「障害者が働きやすい環境を整えること」などが、特例子会社の要件として求められています。
雇用状況
厚生労働省の「令和4年障害者雇用状況の集計結果」によると、特例子会社の認定を受けている企業は579社(前年度より17社増)、雇用されている障害者は合計43,857人(前年度より2,138.5人増)となっています。
障害の種別でみると、もっとも多いのは知的障害者で22,941.0人(約52%)、次いで身体障害者が11,835.5人(約27%)、精神障害者は9,080.5人(約21%)でした。
特例子会社で働くメリット
特例子会社で働く主なメリットは以下の2点です。
障害者が働きやすい環境が整えられている
特例子会社では、障害者のために環境を整備することが定められているため、働きやすい環境が整っています。実際の取り組みとして、下記のような例があげられます。
- 障害特性にあわせた仕事の割り振り
- 職場のバリアフリー化
- 障害者向けの時短勤務制度やフレックスタイムの導入
- 通院や投薬に必要な時間を確保できる通院休暇の導入
- ジョブコーチや精神保健福祉士などの配置 など
特例子会社では障害者のための仕事や職場環境、制度、人的サポートが用意されているので、障害の有無にかかわらず自分の能力を発揮しやすい環境といえるでしょう。
大手企業が設立することが多いため安定的に働ける
特例子会社は、大手企業のグループ会社であることが多いため、景気に左右されにくく安定的に働けるメリットがあります。
また親会社と同等の福利厚生が受けられるケースもあり、安心して仕事に専念できる環境が整っています。
特例子会社で働くデメリット
障害者が働きやすい環境が整えられている特例子会社ですが、以下のようなデメリットも存在します。
スキルアップが難しい傾向がある
特例子会社での業務は、親会社の業務補助が主であり内容が限られていることが多いため、スキルアップが難しい傾向にあります。
業務内容は特例子会社によるため一概にはいえませんが、専門的な知識を身につけられる機会が少ないため、業務に慣れてくると物足りなさを感じる方もいるかもしれません。
一般企業より給料が低いこともある
特例子会社での業務は一般企業に比べて難易度が低いものが多いため、給料が低く設定されているケースも多く見られます。昇給がある場合でも、一般企業に比べると高くありません。
特例子会社は雇用の促進と安定を一番の目的にしているため、給与面ではまだまだ一般企業の水準に達していないのが現状です。
特例子会社における雇用のメリット・デメリット
ここからは、雇用者からみた特例子会社のメリット・デメリットを簡単に解説します。
メリット
特例子会社には、以下のメリットがあります。
- 障害者雇用に合わせた組織設計ができる
- 設備投資や雇用管理の効率化を図れる
- 職場定着率の向上が見込める
- 障害者雇用のノウハウが蓄積する
特例子会社側の最大のメリットは、障害者雇用を前提とした組織設計ができることです。障害者に合わせた設備や制度を設立時に準備できるため、設備投資や雇用管理の効率化につながります。
働きやすい環境を整えることで、人材の定着率も高まります。事例が集まってノウハウが蓄積すれば、自社グループ内のさらなる障害者雇用にも役立てられるでしょう。
デメリット
一方で、特例子会社には以下のようなデメリットもあります。
- 障害者雇用のすべての問題が解決するわけではない
- 付加価値のある業務を生み出しにくい
- 障害者の雇用・育成と営利企業として経営の両立が求められる
特例子会社を設立すれば、障害者雇用のすべての問題が解決するわけではありません。いくら設備や制度が整っていたとしても、社内に障害者への理解に乏しい従業員がいればトラブルに発展する場合も考えられます。
また特例子会社の業務は親会社の業務を補助するものが多く、付加価値のある業務を生み出しにくいのが現状です。特例子会社といえど利益を上げる必要があるため、障害者雇用と経営の両立が求められます。
特例子会社と一般企業の障害者雇用枠との違い
特例子会社と一般企業の障害者雇用枠とでは、設備や制度、従業員に占める障害者の割合が異なります。
特例子会社 | 一般企業 | |
---|---|---|
雇用率の義務 | 20% | 2.3% |
業務内容 | 親会社の業務補助が主 | 企業ごとに設定 |
障害への配慮 | 明確な基準がある(認定を受ける必要がある) | 自社基準 |
特例子会社では、障害者が働きやすいよう配慮されているので、一般の企業に比べると設備や制度、スタッフの配置など職場環境が整っています。また従業員に占める障害者の割合も多いのが特徴です。
一方、一般企業の障害者雇用枠の場合は、環境が十分に整っていないケースもあり、また障害者数も特例子会社に比べると少ない傾向にあります。
特例子会社で働いている方の実例
ここでは、特例子会社で働いている方の実例として、JTBデータサービスで活躍している2名を紹介します。
聴覚障害のあるYさんの場合
2014年入社(株)JTB出向 本社ブランド・コミュニケーションチーム
聴覚障害のあるYさんは、以前は仕事へのモチベーションが保てず転職を考えていました。しかし、特例子会社からの提案によって新しいフィールドでキャリアアップを実現。
JTBグループの社会貢献活動の運営に携わったり、「オンライン手話サークル」を主催したり、Yさんの特性とスキルを活かせる活動に積極的に取り組んでいます。
障害のある社員に対する理解の促進と活躍に向けて具体的施策を次々と提案し、さらなる活躍が期待されています。
精神障害のあるMさんの場合
2013年入社(株)JTBデータサービスHR課(humanresource)勤務
入社時は契約社員として主にデータ入力業務に携わっていたMさん。同じように精神障害で悩んでいる方の役に立ちたいという思いから、精神保健福祉士の資格を取得しました。
障害のある社員をサポートするための課(HR課)へ異動し、JTBグループ内の障害者就労情報の整理や各種申請業務に注力しています。
Mさんは社員登用試験にも見事合格し、正社員としてより多くの社員のサポートが出来る人材として期待されています。
特例子会社での就労に向いている人
以下に当てはまる方は、特例子会社での就労が向いているといえます。
- 障害の特性に合わせた業務に関わりたい方
- 一般企業で働くことに不安を抱えている方
- 同じ障害がある人と働きたい方
- 給料よりも安定した環境を優先して働きたい方
特例子会社では、障害者に対する配慮がなされており、働きやすい環境が整っています。そのため、障害の特性に合わせた仕事をしたい方や一般企業で働くことに不安を抱えている方におすすめです。
雇用される障害者の人数も多いため、同じ障害がある仲間とも出会いやすいでしょう。
特例子会社の多くは大手企業のグループ会社なので、安定的に働けるのもメリットのひとつ。一般企業に比べると給料は低い傾向にありますが、給料より安定を重視する方にも向いています。
ただ今後は、特例子会社でも社員の成長や自立のために、付加価値のある事業を展開する企業も出てくることが想定されます。
そういう企業では給料等の労働条件も向上してくると考えられます。
特例子会社で働くには?【求人の探し方】
特例子会社で働くには、具体的に何をすればよいのでしょうか。ここでは、特例子会社の求人の探し方を3つお伝えします。
特例子会社のホームページで採用情報を確認する
特例子会社のホームページには採用情報が掲載されている場合があります。以下の流れで探すと、簡単に情報収集できます。
①厚生労働省の特例子会社一覧(令和4年6月1日時点)から、就職を希望する都道府県の特例子会社を確認する
②インターネットで「特例子会社名+都道府県」を検索する
ハローワークの障害者専門窓口に相談する
ハローワークには一般雇用枠とは別に「障害者専門窓口」が設けられています。特例子会社への就職を目指している方は、障害者専門窓口に問い合わせてみましょう。
公共機関であるハローワークには情報が集まりやすく、求人数自体も他の機関に比べて多い傾向にあります。ただし、雇用条件や待遇のよくない求人も多いため見極めが肝心です。
障害者専門の人材紹介会社を利用する
障害者専門の人材紹介会社や転職エージェントを活用するのもひとつの手段です。求人探しはもちろん、応募書類の添削や面接練習などのサポートが手厚いので、転職・就職活動に専念したい方に向いています。
またハローワークにはない独自の求人を取り扱っていることが多く、企業の内情にも詳しいので、障害や特性にあった求人を見つけやすいという利点もあります。
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JTBデータサービスは、障害者専門の転職・就職エージェントです。「健常者も障害者も同じ土俵に立って、お互いへの配慮を前提としながら活躍の場を見つけていくこと」をコンセプトに、東京を中心にサービスを展開しています。
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