障害のある方が就職や転職を考える際「障害者雇用で正社員として働けるの?」「正社員へのなりやすさは一般雇用とはどう違うの?」と気になる方は多いのではないでしょうか。
本記事では、障害者雇用で正社員を目指す方向けに、下記4点を中心に解説しています。
- 障害者雇用の実態(正社員の割合や給料など)
- 障害者雇用と一般雇用の正社員の違い
- 障害者雇用で正社員として働くメリット・デメリット
- 障害者雇用で正社員になると障害年金は支給停止になる?
障害者雇用の正社員に向いている人の特徴や、正社員になるルートについても紹介していますので、ぜひ参考にしてくださいね。
障害者雇用で正社員は難しい?障害者雇用の実態
まずは、障害者雇用における正社員の割合や給料の平均などの実態を見ていきましょう。
一般企業か特例子会社かによって正社員のなりやすさは異なる
障害者雇用でも正社員として働くことは可能です。しかし、一口に障害者雇用といっても、一般企業か特例子会社(障害者雇用の促進と安定を目的に設立された会社)かによって正社員へのなりやすさは異なります。
一般企業の障害者雇用の場合は、パートやアルバイト、契約社員からスタートする求人が多いのに対し、特例子会社の場合は、はじめから正社員で採用されることも珍しくありません。
企業によって採用時の社員区分が異なるため、求人を探すときはそのあたりにも着目してみましょう。
障害種類別の正社員の割合
厚生労働省の「平成30年度障害者雇用実態調査」によると、障害種類別の正社員の割合は以下のとおりです。
またここでいう正社員は契約期間の定めのない無期契約社員を指します。
区分 | 正社員の割合 |
---|---|
身体障害者 | 49.3% |
知的障害者 | 18.4% |
精神障害者 | 25.0% |
発達障害者 | 21.7% |
身体障害者は正社員の割合が49.3%と半数近くを占めるのに対して、知的障害者や精神障害者、発達障害者は18~25%前後と低くなっています。
障害者雇用の平均給料・年収
「平成30年度障害者雇用実態調査」によると、障害者雇用(週30時間以上労働のケース、非正規雇用も含む)の平均賃金は以下のとおりです。
区分 | 平均賃金※1週30時間以上労働 | 想定年収※2 |
---|---|---|
身体障害者 | 24万8,000円 | 約322~397万 |
知的障害者 | 13万7,000円 | 約178~219万 |
精神障害者 | 18万9,000円 | 約246~302万 |
発達障害者 | 16万4,000円 | 約213~262万 |
※1 参考:平成30年度障害者雇用実態調査|厚生労働省
※2 想定年収は、平均賃金の12ヶ月分+賞与1~4ヶ月分と仮定して概算
平成30年の日本人全体の平均年収(441万円)と比べると、身体障害者以外は、6~7割以下の水準であることがわかります。
ただし、障害者雇用の給料が低い要因は、一般雇用よりも短時間勤務が多いことや、パートやアルバイトなど非正規雇用の割合が多いことも大きく関係しています。
障害者雇用と一般雇用の正社員の違い
障害者雇用と一般雇用の正社員とでは、応募できる条件や働きやすさなどに違いがあります。
障害者雇用:障害者手帳を持つ方のみ応募できる
一般雇用:障害者手帳の有無にかかわらず誰でも応募できる
障害者雇用枠での求人は、障害者手帳を持つ方が応募できます。障害があることを企業側が理解した上で採用されるため、設備や休暇、サポートスタッフの配置など、働きやすい環境が整えられています。
それに対して一般雇用枠での求人は、障害者手帳の有無にかかわらず企業が提示する条件を満たせば、誰でも応募可能です。求人数が多く選択肢も広いですが、障害者の雇用を前提としていないため、必要な配慮が得られない可能性もあります。
なお「障害者の就業状況等に関する調査研究」によると、障害者雇用と一般雇用の就職後1年時点の定着率は、それぞれ以下の通りです。
- 障害者雇用(障害を開示している)平均70.4%
- 一般雇用(障害を開示していない)平均30.8%
参考:障害者の就業状況等に関する調査研究(2017年、JEED)
このように、障害者雇用と一般雇用とでは定着率に2倍以上の差がつくことがわかっています。
障害者雇用で正社員として働くメリット・デメリット
ここでは、障害者雇用で正社員として働くメリットとデメリットを紹介します。障害者雇用で正社員を目指すなら、どちらもしっかり把握しておくことが大切です。
メリット
障害者雇用で正社員として働くメリットは、以下の2点があります。
- 障害への理解が得やすく働きやすい
- 賞与や福利厚生の充実など待遇がよくなる
障害者雇用で正社員として働く最大のメリットは、一般企業に比べて障害への理解が得やすく働きやすい点です。たとえば、障害や特性に合わせた業務を任されたり、通院のための休暇が取りやすいよう配慮してもらえたりします。
また、正社員になると福利厚生の充実や賞与も期待できるので、非正規の場合と比べて待遇がよくなるのも大きな魅力といえます。
デメリット
一方で以下のようなデメリットもあります。
- 専門職が少なくスキルアップがしにくい
- 昇給が見込めないこともある
正社員でも障害者雇用枠での業務は、一般雇用に比べて軽作業や簡単な事務作業などが多く、専門職は少ない傾向にあります。仕事に慣れてくると、物足りなく感じる方もいるかもしれません。
長く働いたとしても、スキルアップできなければ昇給がそれほど見込めない可能性もあります。
障害者雇用の正社員に向いている人の特徴
以下の特徴に当てはまる方は、ぜひ障害者雇用の正社員に挑戦してみましょう。
- 体調が安定している人
- 求められるスキルがある人
- 協調性のある人
まず大切なのは「体調が安定していること」です。突発的な休みが多いと、重要な仕事は任せてもらいにくいでしょう。障害による症状が安定している人は、正社員として雇用されやすいといえます。
また、実務をこなせるスキルはもちろん、業界・業種を問わず、人間関係やチームワークは重視されるポイントです。周りの環境になじんで働ける協調性も、障害者雇用の正社員を目指す上では大切といえるでしょう。
障害者雇用で正社員になるには?ルートは2種類
障害者雇用で正社員になるには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、2つのルートを紹介します。
非正規・契約社員から正社員登用を目指す
非正規・契約社員でも、一定の経験を積んで実績を残せば、正社員になれる可能性があります。これを「正社員登用制度」といいます。
制度の基準は企業によって異なるため、具体的にどういった基準が設けられているのか事前に確かめておきましょう。また制度があっても事例がない場合もあるため「実際に障害者雇用で登用実績があるか」もよく確認しておく必要があります。
スキルアップして正社員求人に応募する
障害者雇用枠で正社員を目指すのであれば、正社員雇用で採用されることが一番の近道です。しかし、最初から正社員の求人は一般雇用に比べると多くはありません。
その分狭き門になるので、自分自身の市場価値を高めるために現在の職場で実績を作ったり、資格を取得したりしてスキルアップすることが大切です。
また正社員求人を探す場合は、障害者専門の転職・就職エージェントを活用するのもおすすめです。応募書類の添削や面談の練習、特性に合わせた非公開求人の紹介など、一人ひとりと向き合って丁寧にサポートしてくれるため、自分に合った正社員求人に出会える可能性が高まります。
障害者雇用で正社員になると障害年金は支給停止になる?
結論からいうと、正社員として働きながら障害年金をもらうことは可能です。しかし、ケースによっては減額や支給停止になることもあるため注意しましょう。
障害年金が減額・支給停止になるケース
20歳前の傷病による場合、障害基礎年金には所得制限があります。そのため、前年の所得が一定の額を超えると、支給額が減額・支給停止になります。
前年の本人所得額 | 支給内容 |
---|---|
472万1,000円以上 | 全額停止 |
370万4,000円以上 | 2分の1の年金額停止 |
370万4,000円以下 | 全額支給 |
参考:20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等|日本年金機構
障害年金が減額・支給停止にならないケース
20歳以降の傷病による場合は、障害基礎年金に所得制限はないため、正社員になって年収があがっても、そのまま受給が可能です。
なお、障害年金は「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2階建ての制度です。障害基礎年金には20歳前の傷病による場合には所得制限がありますが、障害厚生年金にはこのような所得制限はありません。
障害者雇用でもスキル次第で正社員になれる!
一般雇用の正社員に比べると求人数は限られるものの、障害者雇用で正社員として働くことは、決して不可能なことではありません。
たとえば、契約社員で採用されたとしても、一定の経験を積めば、正社員としてステップアップできる可能性があります。また特例子会社の場合は、はじめから正社員を前提とした求人も珍しくありません。
障害者専門の転職・就職エージェントでは、ハローワークなどでは扱っていない求人も数多くあるため、障害者雇用で正社員にチャレンジしたい方は、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
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