就労継続支援A型とは、周りからのサポートがあれば雇用契約に基づく就労が可能な方向けの福祉サービスです。全国に数多くの事業所があるため「具体的な仕事の内容は?」「手取りはどのくらい?」と気になる方も多いでしょう。
本記事では、就労継続支援A型について下記3点を中心に解説しています。
- 就労継続支援A型とは
- 就労継続支援A型とB型、就労移行支援との違い
- 就労継続支援A型の利用方法や事業所の選び方
就労継続支援A型のメリット・デメリットや、どんな人におすすめかも紹介していますので、ぜひ参考にしてくださいね。
就労継続支援A型とは
就労継続支援A型とは、障害や病気のある方が雇用契約を結んだ上で、サポートを受けながら就労できる福祉サービスです。
まずは、どんな人が対象者になるのかや仕事内容、給料など基本知識をおさえておきましょう。
対象者
就労継続支援A型の対象者は、原則18歳以上65歳未満の障害・難病のある方です。
また、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
① 移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
② 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
③ 就労経験のある者で、現に雇用関係の状態にない者
引用:障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス|厚生労働省
就労継続支援A型は、障害者手帳を持っていなくても医師の診断書や通院証明があれば利用できることもあります。詳細はお住まいの地域の障害福祉窓口で確認しましょう。
仕事内容・勤務時間
就労継続支援A型には、以下のような仕事があります。
- パソコンでの入力作業(アンケート集計・データ入力など)
- カフェやレストランでの調理・接客スタッフ
- ビルやホテルでの清掃
- 農作物の栽培、パック詰め作業
- 商品の梱包作業
- 配達、宅配作業の補助
就労継続支援A型の仕事内容は、一般企業とほとんど差はありません。
障害や病気を抱えている方が働くので、勤務時間は1日4~6時間程度と比較的短く設定されていることが多いです。
給料・手取り
就労継続支援A型では、雇用契約を結んだ上で働くため、最低賃金が保証されます。
厚生労働省の調査によると、令和3年度の就労継続支援A型の月額給与平均は81,645 円でした。令和元年度は78,975円、令和2年度は79,625円と、ここ数年は8万円前後となっています。
また、手取りとは、給料から雇用保険料や交通費、事業所の利用料を差し引いた金額です。東京都と埼玉県を例におおよその手取りを算出したので、参考にしてください。
時給 | 雇用保険 | 交通費 | 利用料 | 手取り | |
---|---|---|---|---|---|
東京都 | 1,072円 | 579円 | 8,000円 | 0円 | 87,901円 |
埼玉県 | 987円 | 533円 | 5,000円 | 0円 | 83,297円 |
※時給は最低賃金(令和4年度)、事業所利用料は無料、勤務時間は4.5時間×20日と仮定
※雇用保険料は一般の事業の場合と仮定し、負担額を賃金平均×0.6%で算出
※交通費も仮定
なお、健康保険や厚生年金保険に加入している場合は、その分上記の金額よりも少なくなります。
利用料
就労継続支援A型の利用料は、前年の収入に応じて負担額の上限が設けられています。
前年の世帯収入が合計300万円以下の場合は、無料で利用できます。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯※1 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯※2 | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※1…3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入がおおむね300万円以下の世帯が対象
※2…収入がおおむね600万円以下の世帯が対象
参考:障害者の利用者負担|厚生労働省
利用期間
就労継続支援A型には、利用期間の制限はありません。ただし、事業者との雇用契約が有期の場合、契約満了時に更新されない可能性もあります。
就労継続支援A型とB型、就労移行支援との違い
就労継続支援には、A型とB型の2種類があります。主な違いは、雇用契約の有無(最低賃金が保証されるかを含む)と対象年齢です。
就労継続支援A型・B型、就労移行支援との違いを表にまとめましたので、参考にしてください。B型、就労移行支援の説明は後述します。
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | 就労移行支援 | |
---|---|---|---|
主な目的 | 就労 | 訓練・リハビリ | 就職支援 |
対象年齢 | 原則18~65歳未満 | 年齢制限なし | 原則18~65歳未満 |
雇用契約 | あり | なし | なし |
仕事内容 | 一般企業とほぼ変わらない | 軽作業が多い | 働きながら、就労に必要なスキルを学ぶ |
給料 | 最低賃金が保証されている | 最低賃金が保証されていない | 基本的に賃金は発生しない |
平均賃金 | 月平均 81,645 円※ | 月平均16,507 円※ | ー |
利用期間 | 制限なし | 制限なし | 原則2年間 |
※令和3年度の平均工賃(賃金)
就労継続支援B型とは
就労継続支援B型とは、雇用契約を結ばずに訓練やリハビリを行える福祉サービスです。
A型事業所の仕事内容が難しい方や、年齢や体力的に一般企業に雇用されるのが困難な方が対象で、A型事業所のように年齢制限はありません。
雇用契約を結ばないため最低賃金は保証されておらず、仕事内容はお菓子の製造や農作業など、軽作業が多いことが特徴です。
就労継続支援A型から就労移行支援制度への移行
就労継続支援A型の利用者には、一般企業への就職を目指すための「就労移行支援」にステップアップする方も多くいます。
就労移行支援では、働きながら一般企業への就労に必要なスキルが学べるのが特徴です。PCスキルやビジネスマナーなど、より実践的なトレーニングを受けられるので「一般企業への就職を目指す方」「収入を上げたい方」には、おすすめの福祉サービスといえます。
就労移行支援は、働くことを目的とした就労継続支援とは違い、一般企業への就職を目指すための制度であるため、給料は発生しません。また利用期間は、原則2年間と定められています。
就労継続支援A型のメリット・デメリット
続いては、就労継続支援A型のメリット・デメリットをみていきましょう。
メリット
就労継続支援A型の主なメリットは以下の3点です。
- 最低賃金が保証される
- 利用期間に制限がない
- 必要な配慮を受けながら働ける
就労継続支援A型では、雇用契約を結ぶことで最低賃金が保証されるため、B型や就労移行支援に比べると高い給料がもらえます。また利用期間に制限はなく、長く働き続けられる点もメリットです。
障害の特性に応じて必要なサポートを受けられるので、一般企業では就労が困難な方も体調に合わせて無理なく働けます。
デメリット
就労継続支援A型は、雇用契約を結んで働く場であるため、一般企業への就職に必要なPCスキルやビジネスマナーの講習などは受けられません。
就職に向けた訓練が不十分である点は就労継続支援A型のデメリットといえるでしょう。
就労継続支援A型はどんな人におすすめ?
以上のメリット・デメリットを踏まえた上で、就労継続支援A型はこんな人におすすめできる支援サービスといえます。
- 最低賃金以上の給料を毎月もらいたい人
- 働きたいけれど、一般企業の就労には不安がある人
- 体調にあわせて無理なく働きたい人
就労継続支援A型の利用方法
就労継続支援A型を利用するには、以下のステップがあります。
ステップ① A型事業所を探す
ステップ② 見学や体験に行く
ステップ③ 事業所の選考を受ける
ステップ④ 各自治体の福祉担当窓口で利用申請をする
まずはハローワークや障害福祉窓口などでA型事業所の求人情報を集めましょう。「障害福祉サービス等情報公表検索サイト」など、検索サイトを使うのもおすすめです。
気になる事業所を見つけたら見学・体験に行き、仕事内容や通いやすさ、事業所の雰囲気をチェックしてください。複数の事業所を見学するのもよいでしょう。その後、選考に進み事業所から内定をもらえた場合は、自治体の福祉担当窓口で利用申請を行います。
就労継続支援A型事業所の選び方
A型事業所は全国に約3,900箇所(令和3年1月現在)に点在しており、何を基準に選べばよいかわからない方もいるでしょう。
ここでは、選び方のポイントを5つお伝えします。
- 仕事内容が自分に合っているか
- 通い続けやすい場所にあるか
- 事業所の雰囲気が合いそうか
- 経営状態が悪くないか
- サポート体制が整っているか
仕事内容が自分に合っているか
仕事の内容が自分に合っていないと長く働き続けられません。ひとりで黙々と作業をするのが向いている人もいれば、接客が好きな人もいます。
「カフェでの接客」や「データ入力」「農作業」など、A型事業所の仕事は多種多様です。自分の好きなことや興味を持てる仕事を選びましょう。
通い続けやすい場所にあるか
家から事業所まで遠いと体力的に負担がかかる上、交通費もかさみます。
A型事業所では、基本的に交通費は支給されません。交通費が月に数万円かかってしまうと、経済的な負担も大きくなるため、自宅から近く通いやすい事業所を選ぶのがよいしょう。
事業所の雰囲気が合いそうか
事業所の雰囲気も確認しておきたいポイントです。
パンフレットやサイトを見るだけでは、実際の職場の様子はわかりません。気になる事業者があれば見学・体験に行き、利用者やスタッフのやりとりや仕事中の雰囲気を観察しましょう。良い・悪いではなく「自分と合っているか」が大切です。
経営状態が悪くないか
A型事業所は経営が難しいといわれており、倒産する事業所も少なくありません。そのため、応募の前に事業所の経営状況をチェックしましょう。
事業所によっては、サイト上で財務諸表や事業活動計算書など経営状況を公開している事業所もあります。過去数年の状況を見て、大きくマイナスになっていないかを確かめてみましょう。
サポート体制が整っているか
将来的に一般企業や特例子会社の障害者雇用枠での就職を目指す方は、就労移行支援や一般就労への移行率もチェックしてください。
働く場の提供であることに重きをおいているA型事業所も多いため、就労に関してのサポート体制が十分でない場合もあります。事業所によって方針が異なるため、見学・体験の際に尋ねてみるとよいでしょう。
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就労継続支援A型は、B型とは異なり事業所と雇用契約を結ぶため、最低賃金が保証されているのが特徴です。必要なサポートを受けながら、短時間で働けるため体調に合わせて無理なく働けます。
A型事業所で一定期間経験を積んだら、就労移行支援にステップアップし、一般企業や特例子会社の障害者雇用枠への就職を目指す方も多くいます。
「フルタイムで働くのに自信がない」という方は、ご自身の体力や体調にあわせて、自分に合うA型事業所を探すところからはじめてみてはいかがでしょうか。
就労継続支援の概要については、こちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
関連記事:就労継続支援とは?A型とB型の対象者、仕事内容、給料の違い、選び方のポイントを解説
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