障害者雇用の平均給料・年収はいくら?給与を上げる4つのポイントも解説

障害者雇用の給料は、一般雇用と比べると非正規雇用や短時間労働の割合が多いことから、低くなりがちです。そのため「障害者雇用の平均年収はいくら?」「一般雇用とはどのくらい差があるの?」と気になる方は多いでしょう。

そこで本記事では、障害者雇用の給料・年収について下記4点を中心に解説しています。

  • 一般雇用と障害者雇用の差
  • 障害者雇用の平均給料・年収はいくら?
  • 障害者雇用の給料・年収が低い3つの理由
  • 障害者雇用の給料・年収はどうやって決められている?

障害者雇用で給料・年収を上げるポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

一般雇用と障害者雇用の差

まずは一般雇用と障害者雇用の差について解説します。

障害者雇用促進法に基づく区別

はじめに、一般雇用と障害者雇用では、応募条件や受けられる配慮が異なります。

一般雇用枠は、誰でも応募可能な求人です。しかし、障害者の雇用を前提としていないため、必要な配慮が十分に得られないこともあります。

一方の障害者雇用枠は、障害者手帳を持つ方のみが応募できる求人です。「障害者雇用促進法」に基づいて、障害者の雇用義務や差別の禁止、合理的配慮の提供義務などが定められているため、障害者にとって働きやすい環境が整えられています。

給料面

一般雇用に比べると、障害者雇用の平均給与は低い傾向にあります。

平成30年度障害者雇用実態調査のデータをもとに障害者雇用の平均年収を概算してみると、同年の日本人全体の平均年収「441万円」と比べて、150~200万円ほど低い(※1)ことがわかりました。

※1 賞与は考慮していません。
参考:平成30年分民間給与実態統計調査結果について|国税庁, 平成30年度障害者雇用実態調査|厚生労働省

障害者雇用の平均給料・年収はいくら?

障害者雇用と一口にいっても、障害種別や労働時間によって平均給料・年収は大きく変わってきます。

【障害種別】

  • 身体障害の場合
  • 知的障害の場合
  • 精神障害の場合
  • 発達障害の場合

障害種別ごと、労働時間ごとに詳しくみていきましょう。

身体障害の場合

労働時間平均賃金※1想定年収※2労働時間の割合※1
週30時間以上24万8,000円約298万円79.8%
20時間以上30時間未満8万6,000円約103万円16.4%
20時間未満6万7,000円約80万円3.4%

※1 参考:平成30年度障害者雇用実態調査|厚生労働省
※2 想定年収は、平均賃金の12ヶ月分として概算

障害者種別のなかでもっとも給与が高いのが身体障害者です。労働時間別に見ると、週30時間以上働いている人の割合ももっとも高く、約8割を占めています。

知的障害の場合

労働時間平均賃金※1想定年収※2労働時間の割合※1
週30時間以上13万7,000円約164万65.5%
20時間以上30時間未満8万2,000円約98万31.4%
20時間未満5万1,000円約61万3.0%

※1 参考:平成30年度障害者雇用実態調査|厚生労働省
※2 想定年収は、平均賃金の12ヶ月分として概算

知的障害者で、週30時間以上働いている人の割合は65.5%でした。精神障害者や発達障害者に比べて労働時間は長い傾向にあったものの、給与は全体的に低い水準です。

精神障害の場合

労働時間平均賃金※1想定年収※2労働時間の割合※1
週30時間以上18万9,000円約227万47.2%
20時間以上30時間未満7万4,000円約88万39.7%
20時間未満5万1,000円約61万13.0%

※1 参考:平成30年度障害者雇用実態調査|厚生労働省
※2 想定年収は、平均賃金の12ヶ月分として概算

精神障害者は、ほかの障害種別に比べて週30時間以上働いている人の割合が47.2%と、やや低めです。労働時間が20時間以上30時間未満、20時間未満の場合の給与は、知的障害者の水準とほとんど変わりません。

発達障害の場合

労働時間平均賃金※1想定年収※2労働時間の割合※1
週30時間以上16万4,000円約197万59.8%
20時間以上30時間未満7万6,000円約91万35.1%
20時間未満4万8,000円約58万5.1%

※1 参考:平成30年度障害者雇用実態調査|厚生労働省
※2 想定年収は、平均賃金の12ヶ月分として概算

身体障害者の次に給与が高いのが、発達障害者です。労働時間別に見ると、週30時間以上働く人の割合が多く、約6割を占めています。

障害者雇用の給料・年収が低い3つの理由

障害者雇用の給料・年収が低い理由として、主に以下の3つが挙げられます。

  • 非正規雇用や短時間労働の割合が高い
  • 働きやすい環境を作るためにコストがかかる
  • 障害の特性によって業務が限定される場合がある

それぞれを詳しく解説します。

1.非正規雇用や短時間労働の割合が高い

障害者雇用では、一般雇用に比べて非正規雇用や短時間労働の割合が高い傾向にあります。

【正社員の割合】

身体障害者:49.3%
知的障害者:18.4%
精神障害者:25.0%
発達障害者:21.7%

参考:平成30年度障害者雇用実態調査|厚生労働省

※ここでいう正社員は契約期間の定めのない無期契約社員を指します。

同年に行われた総務省統計局の「労働力調査」では、日本全体の労働者の正規雇用の割合は62.2%でした。一方、障害者雇用の正社員の割合は、身体障害者で約5割、それ以外の障害種別では2割程度と低い水準です。

また障害者雇用の場合、労働時間が週30時間未満の方の割合も高く、そのことも給与水準を下げる要因のひとつになっています。

2.働きやすい環境を作るためにコストがかかる

障害者を雇用するには、障害者が働きやすい環境を作るために、設備のバリアフリー化や休暇制度の導入、専門スタッフの配置など、さまざまな施策が必要です。

そういった配慮にコストがかかる分、給与や仕事の責任など処遇を下げてバランスをとっている企業も少なくありません。

3.障害の特性によって業務が限定される場合がある

障害の特性によって業務が限定されてしまうことも給料が上がりにくい原因のひとつです。

障害者雇用の場合、障害を考慮した業務が用意されていることが一般的です。補助業務や軽作業などの業務は、専門性や難易度の高い業務と比べると給料が低くなる傾向にあります。

また障害によっては、働ける時間が限られていることで昇進や昇格が難しくなっていることも要因のひとつといえるでしょう。

障害者雇用の給料・年収はどうやって決められている?

障害者雇用の給料・年収はどのように決められているのでしょうか。

ここでは、おさえておきたいポイントとして「最低賃金法」と「減額特例許可制度」を解説します。

最低賃金法

一般雇用・障害者雇用に関係なく、労働者に支払われる給料には「最低賃金法」が適用されます。最低賃金とは、国が定めた1時間あたりの最低限度額を指します。なお、割増賃金や通勤手当などは含まれません。

金額は、働く人の生活費や賃金、企業の賃金支払い能力などを考慮し、都道府県ごとに定められています。

首都圏の令和4年の最低賃金は、以下の通りです。

都道府県最低賃金
東京都1,072円
神奈川県 1,071円
埼玉県987円
千葉県984円

※2023年4月現在
参考:地域別最低賃金の全国一覧|厚生労働省

たとえ双方の合意があって雇用契約書が結ばれていたとしても、最低賃金以下の給料の場合は、法律上契約が無効になります。

減額特例許可制度

最低賃金法には特例があります。以下の条件に当てはまる労働者の場合は「減額特例許可制度」により、最低賃金の減額が認められています。

  • 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
  • 試用期間中の者
  • 基礎的な技能及び知識を習得させるための職業訓練を受ける者
  • 軽易な業務に従事する者
  • 断続的労働

参考:最低賃金の減額の特例|厚生労働省

「減額特例許可制度」は、一般の労働者よりも著しく労働能力が低いとみなされる場合でも、働く機会を狭めないための特例です。単に障害があるだけでは対象にはならず、障害が業務の遂行に直接関係し、かつ著しく支障があることが明白である必要があります。

なお、許可を受けた業務以外の業務にあたる際には、一般の労働者と同じく最低賃金が適用されます。

障害者雇用で給料・年収を上げる4つのポイント

障害者雇用で給料・年収をあげるにはいくつか方法があります。ここでは、具体的なポイントを4つお伝えします。

  • 正社員登用制度を活用する
  • 資格取得などで専門性を高める
  • 平均給与の高い職種・業種に転職する
  • 福利厚生の充実度を重視して転職する

もちろん、いちばん大切なことは安定して働き続けることです。ご自身の体調や障害の状況、障害年金などの他の収入減を考慮して、「給料・収入を上げたいな」と思ったらチャレンジしてみてくださいね。

1.正社員登用制度を活用する

現在、パートやアルバイト、契約社員などの雇用形態で働いている方は、正社員登用制度で正社員を目指すのもひとつの方法です。まずは「正社員登用制度があるか」「登用事例があるか」「正社員登用される条件は何か」を会社に確認してみてください。

正社員として雇用されれば、基本給が増えるだけでなく賞与も期待できるため、場合によっては100万円以上年収が上がる場合もあります。

2.資格取得などで専門性を高める

給料を上げるために、新たな資格を取得するのも有効です。専門性を高めることで担当できる業務が増えれば、基本給が上がる可能性があります。

企業によっては、基本給にプラスして「資格手当」が支給されることも。資格取得は転職時のアピール材料にもなるため、積極的に挑戦しましょう。

日商簿記検定や行政書士、宅地建物取引士(宅建士)、ファイナンシャルプランナーなど、広く知られていて汎用性の高い資格がおすすめです。

3.平均給与の高い職種・業種に転職する

給与は業界によっても大きく変わるため、平均給与の高い業界に転職するのもひとつの方法です。

「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、平均給与の高い業種は「電気・ガス・熱供給・水道業」「金融業・保険業」「情報通信業」でした。一方、平均給与の低い業種は「宿泊業・飲食サービス業」「農林水産・鉱業」「サービス業」などです。

<平均給与の高い業種>

業種平均年収
電気・ガス・熱供給・水道業766万円
金融業・保険業677万円
情報通信業624万円

<平均給与の低い業種>

業種平均年収
宿泊業・飲食サービス業260万円
農林水産・鉱業310万円
サービス業369万円

参考:令和3年分民間給与実態統計調査|国税庁

「違う業界にチャレンジしてみたい!」という方は、思い切って平均給与の高い業種に転職すれば、効率的に年収を上げられる可能性があります。

4.福利厚生の充実度を重視して転職する

年収アップを考えると「基本給」ばかりを見てしまいがちですが、「福利厚生の充実度」も大切です。住宅手当・家賃補助や食堂・昼食補助などの福利厚生が充実していれば、その分生活費の支出を減らせるからです。

「A社のほうが基本給は高いけど、計算してみると住宅手当や食事補助のあるB社のほうが手元に残るお金が多かった」ということもありえます。転職の際は、福利厚生も含めたトータルの報酬をぜひ意識してみてください。

障害者雇用で転職成功率を上げるには?

障害者雇用で転職成功率を上げるには、障害者専門の転職エージェントを利用するのがおすすめです。障害の特性を踏まえて自分に合った求人を紹介してくれるのはもちろん、書類作成や面接対策などさまざまなフォローが受けられます。多くの求人情報が集まるため、給与平均の高い職種・業界への転職のチャンスも広がります。

配慮が必要なことなどもあらかじめ企業に伝えてくれるため、スムーズな転職活動ができるのも大きな魅力です。

転職エージェントの選び方や活用ポイントはこちらの記事で詳しく解説しています。

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